整体院・整骨院・鍼灸院を
経営のプロとして手厚くサポート

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

まず最初に、現在の仕事内容について教えてください。

廣瀬さん

廣瀬さん

メインの事業は、整体院・整骨院・鍼灸院のコンサルティング業務です。それぞれの院がより売上を立てられるようにLTV(※1)の高いメニューをご提案させていただいたり、院の内部により深く入り込んでメニューの作成を一緒にやらせていただいたりしています。ほかにも、クリニックや病院との連携をより促進させるための医療提携にも力を入れています。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

現場に立つ技術者の方々は、お金儲けに関わることに対してどこか苦手意識を抱かれているイメージがあります。廣瀬さんはそこに、プロとして切り込んでアドバイスをしているような形なのでしょうか?

廣瀬さん

廣瀬さん

そうですね。確かな技術を持っているにもかかわらず、院の皆さんのほとんどが「この業界は儲からない」と思われているうえに、「儲けること=悪いこと」と感じていらっしゃいます。この実態は業界の特徴とも言えるのですが、技術に対して自信があるのであれば、それは世の中に残していったほうがいいんじゃないですか?ということを私から院の方々にお話させていただいています。お話してみると、「チャンスがあるならやりたい」とおっしゃってくださる方々が多くて。そんな方々を、専門家としてサポートさせていただくのが私の今の仕事です。

健康分野への強い関心と、病院の経営経験。
売上難で悩む技術者のためにできることは

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

現在のお仕事には、どのような経緯でたどり着かれたのでしょう?

廣瀬さん

廣瀬さん

病気を患う親族が昔から周りに多かったのが、健康関係のことに携わろうと思い始めたキッカケでした。父が脳卒中で早くに亡くなったり、母が慢性的な疾患を患っていたりと、病院のお世話になる機会が多くて。そこから医療・健康分野に興味を持つようになり、大学〜大学院では医薬品の合成について学びました。製薬の勉強をしたら製薬会社に就職するというイメージしか元々は持っていなかったのですが、次第に「自分は製薬会社で働きたいわけではない」と思うようになって。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

では、大学院卒業後は製薬会社ではなく、別の企業に?

廣瀬さん

廣瀬さん

はい。健康や医療ともまったく関わりのない、鉄鋼メーカーに最初は就職しました。ただ、働くなかで体調を崩したタイミングがあり、そのときに医療によって救われて。そこで改めて「健康について見つめ直そう」と。具体的な内容は割愛しますが、8年前から個人で活動するようになり、のちに病院を作るまでに至りました。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

病院を作った際に、現場でのお金の動き方を学ばれたのでしょうか?

廣瀬さん

廣瀬さん

そうですね。病院経営に関わる知識はそこで身につけていきました。その病院はのちに解散したのですが、売上難で悩まれている技術者の方々を目の当たりにしてきた経験を踏まえ、自分なりの健康への携わり方を改めて考えました。現場で悩まれている方々を売上面・経営面でサポートすることは需要が見込まれるためビジネスとして成り立つのではないかと思い、そこから6年くらいサポートの活動を続け、昨年法人化した形です。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

なるほど。実際に廣瀬さんはどのような改善策をご提案されたんですか?

廣瀬さん

廣瀬さん

治療院の技術者は本来であれば対応できる職務範囲が広いはずなのですが、業界に根付いた慣習のせいか、「ここから先は医療行為だから、自分たちはこの範囲までしかやらない」「自分たちはここまでしかお金にしない」と認識されている部分が多々ありました。ただ、病院を運営していた立場からすると、治療院でも取り込める内容がたくさん見受けられたんです。病院が手をつけていた所は非常にマネタイズがしやすいので、それをそのまま治療院側に導入したら患者さんからも喜ばれますし、儲けも出ます。なので、新しいコンテンツのご提案というよりも、病院の範疇だと思われていたものを治療院にご紹介したのが始まりです。私自身は整体・整骨・鍼灸に関する知識はないですし資格も持っていませんが、それでも自らの知見と相手側の需要がマッチすれば、力になれる領域は十分にあります。

理屈を先行させたノウハウ収集ではなく、
自分の〈やりたい〉を研ぎ澄ませて

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

「人の助けになるような仕事をしたいけれど資格は特に持っていない…」「かと言って今から資格を取るのも…」と悩んでいる方もなかにはいらっしゃると思います。そういった方々に向けた、道を見つけるためのキッカケ作りに関するアドバイスをぜひいただきたいです。

廣瀬さん

廣瀬さん

注意点として1つお伝えさせていただくと、理屈が先行した形で勉強している方が多い印象があって。「◯◯◯の症状を良くするためには△△△というものがあるから、それを学ぶ」といったような手段や内容だけを単純に選んでしまっていて、「本当にそれが自分のやりたいことなのか」という視点が抜けているんです。新たな知識を得ることは知識欲が満たされますし楽しいとも思うのですが、「その知識によって、対象となる環境の方々の役に立ち続けることができるのか」という部分まで考えは行き届いていません。そういった状態の方々に対して学習サービスを提供する業者が非常に多いので、率直に言えばカモにされてしまっている方があふれているんです。結果的に知識は手に入ったけれども仕事にはならなかったり、そもそも仕事にしたいと思わないという所に着地する方もいらっしゃいます。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

そういった状態に陥らないためには、どんなマインドが必要でしょうか?

廣瀬さん

廣瀬さん

まずは、自分が憧れる働き方をしていたり、共感を抱いたり、自分の理想の生活を送っていたりする方を見つけて、「この人みたいになりたい」という心持ちを持っておくのが大事だと思います。生き方のスタンスを大切にされている方の背中を追いかけたほうが、得た知識も活かしやすいのではないか、と。いわゆるノウハウコレクター止まりではなく、自分の選択肢が良い方向に広がっていくのではないでしょうか。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

ロールモデルとなる方を思い浮かべながら、自分がこの先どうなっていきたいのかを根元的に噛み砕いていく作業が必要なんですね。

廣瀬さん

廣瀬さん

そうですね。特に健康分野は有資格者の範疇という認識が一般的には強いので、有資格者外がその分野に入り込もうとした場合、「自分が本当にやりたいことを達成できるのか」「それが仕事として成立するのか」という部分を重視したほうがいいと思います。

有資格者と接するうえでの確かな〈軸〉と
限られた時間における生産的活動を意識

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

有資格者外である廣瀬さんが思う、有資格者とのコミュニケーションのコツについて教えてください。

廣瀬さん

廣瀬さん

相手は自分にはない専門的知識を持っているので尊敬すべき対象ではあるのですが、そこに重きを置きすぎると、逆に都合のいいように使われてしまったり、自分がやりたくないことに巻き込まれてしまったりするケースがあります。なので、「なぜ有資格者の方と関わるのか」「関わることで何を作りたいのか、何を成し遂げたいのか」というブレない軸を明確化しておくといいでしょう。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

自分のやりたいことを明らかにする…先ほどの話にも通ずるものがありますね。

廣瀬さん

廣瀬さん

明確になっていないと、せっかく現場の方と接する機会をもらってもただ話をして終わってしまうなど、生産的な活動になかなか繋げられません。また、有資格者のお相手は本来であれば健康を害されている方々なので、まわり回ってそういった方々の時間をもいただいているという意識も忘れずに持っていてほしいです。知りたい・関わりたいと意欲を持つのはいいことですが、興味本位だけで接していい相手ではないのが1つの前提です。

目の前にいる患者だけではなく、
業界及び社会全体にも広く目を向けて

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

これまでの経験を踏まえたうえで、いま経営に悩んでいる治療院の方々に対して見直すべきポイントをアドバイスするとしたらどんなことを伝えますか?

廣瀬さん

廣瀬さん

ご自身の知識や経験にフォーカスするのはもちろん素晴らしいことだと思うのですが、業界全体及び社会において自分がどの立場にいるのか、立ち位置を俯瞰的に把握することもまた大事だと思います。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

と、言いますと?

廣瀬さん

廣瀬さん

整体院・整骨院・鍼灸院の方々が持たれている技術は世界的に見ても素晴らしいものです。これら東洋医学系は日本では保険診療で受けられる所もあると思うのですが、他国では保険で受けることはまずできません。世界では類を見ないほどのコンテンツであるはずなのに、日本社会においてはそこまで日が当たることがないからか、ご自身の能力を過小評価されている方が業界に非常に多くいる印象を受けます。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

なるほど…。冒頭で出てきた「儲けること=悪いこと」という考え方もそういった所に由来しているのかもしれませんね。

廣瀬さん

廣瀬さん

そうですね。自分が社会においてどんな役割を担っていて、どの立ち位置にいるのかを把握することで、改めて自分が責任を果たすにあたってどういう方と一緒に仕事をするべきなのか、そして自分に何が足りないのかということが見えてきます。すると視野がより広がっていくのではないか、と。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

現状だとなかなか外には目を向けられず、どうしても目の前の患者さんに注力しがちな方が多いということですね。

廣瀬さん

廣瀬さん

はい。腕のいい方であればあるほど職人性が強くなってくるので、ここ10年患者さんとしか接していないという技術者も多いと思います。ただその間にも社会は進行していて、日本国内ではとどまらない需要があるので、健全な経営状態を保ち、後輩が憧れを抱いて入ってくるような仕組み作りが重要です。他の選択肢を知らずに、目の前の患者さんだけを見続けるのは、社会的に言えばリソースの損のようにも思えます。持っている優れた資源を上手く活用しきれていません。未来につながるような良い仕組みを作るにはどんな視点が必要なのか、それを現場の方々にはぜひ意識してほしいですね。もっと光が照らされるべき業界だと、私は心から思っています。

確かな技術を誇る業界。
だからこそ可能性を閉ざさず、道を拓いて

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

医療の有資格者が視野を広げたり新たな気づきを得るには、有資格者外の方と接するか、ご自身が現場の外に出るかのどちらかのパターンが多いと思っていて、いずれにせよ閉鎖的な場所に身を置かれているのが現状なのではないか、と。やはり、ご自身にはない知見を持っている方と接する機会を積極的に作ったほうがいいのでしょうか?

廣瀬さん

廣瀬さん

そうですね。資格自体は法律で保護されてはいるものの、それしかできないと考え方が限定的になって自ら可能性を閉ざしてしまい、苦しい経営状況下に置かれた結果、閉業される方を多く見てきました。自分の子どもの代には勧められない仕事だと考えてしまっている方も多くて。ただ、業界の外の人間からすると、まだまだやれることはたくさんあるはずなんです。確かな価値を持っているのに、ご自身ではそれを感じ取ることができないようで。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

素晴らしい価値が発揮されないのはとてももったいないことですよね…。

廣瀬さん

廣瀬さん

新たな知識やノウハウに触れる機会をまずは作り、それを実際に行うか行わないかはまた改めて決めればいいと思うんです。ただ、「知っている」と「知らない」とでは選択の幅が異なってきます。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

知らないままでいると、可能性が開けていく機会そのものを失ってしまいますよね。

廣瀬さん

廣瀬さん

はい。また、10年経っても20年経っても給与水準が変わらないというのもこの業界の問題だと思っていて。この状況に置かれた結果、現場の方々が諦念を抱きがちになってしまっているのではないか、と。技術を正当に評価してもらうためにも、ご自身の能力を積極的に外に向けて発信し、道を閉ざすのではなく拓く意識を持ち続けてほしいです。

新しい国家資格によるブレイクスルーと
有資格者の技術を輸出産業に

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

最後に、今後の展望について教えてください。

廣瀬さん

廣瀬さん

ゆくゆくは業界を変えたいと思いながら、日々仕事に邁進しています。整体・整骨・鍼灸のみではなく、医療従事者に関する新しい国家資格を最終的には作りたいと考えています。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

新しい国家資格…!とても大きな目標ですね!

廣瀬さん

廣瀬さん

先人たちの知恵や技術の積み重ねで今日の発展があるとはもちろん思いますし、歴史ある既存の国家資格も素晴らしいものです。ただ、革新的な新しい物事を作り出すことは現状まだできていないと思うので、そのブレイクスルーを起こすキッカケを作りたいと考えています。技術は進化しているのに国の認定制度が旧態依然という状況はミスマッチなのではないか、と。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

確かに、新しい技術に応じた対応が求められるべきですね。

廣瀬さん

廣瀬さん

またさらに、有資格者の方々の技術を輸出産業にすることも展望のひとつとして抱いています。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

海外の方からすると、日本の技術はとても繊細だとよく評価されていますよね。

廣瀬さん

廣瀬さん

はい。現時点でも海外から相談があって、「他国に駐在している駐在員へのケアが現地では行えない」と。いまは為替の問題で海外のほうがむしろ稼ぎやすい状況下なのでぜひ来てほしいという連絡がすでに入っているので、日本の有資格者の方々が持つ知識や技術を海の向こうにもどんどん広げていけたらと考えています。

【インタビューに答えてくれたのは…】
廣瀨和則(ひろせ・かづのり)さん
1989年 7月17日生まれ(35歳)
一般社団法人 難治性疾患医学会 代表理事
シニアいきがい開発研究会株式 最高執行責任者兼最高技術責任者
出身:香川県高松市 専門:無機化学の合成・分析
香川大学大学院 工学研究科材料創造工学専攻 博士前期課程修了
就労支援事業で障害がある方の健康維持を行いながら、 NPOにっぽん健康村をはじ
めとした団体で栄養学の指導を行う。 クリニックと連携し、分光光度法などの分析
を通して、栄養指導を行っている。

【注釈】
※1:LTV・・・顧客生涯価値(Life Time Value)の略称。顧客が自社と取引を始めてから、関係が終了するまでに得られる総利益のこと。