二足のわらじ
臨床工学技士×コミュニティ運営

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

まず始めに、現在の仕事内容について教えてください。

簔田さん

簔田さん

臨床工学技士として病院で働いています。臨床工学技士歴は10年です。またそのかたわらで、医療従事者コミュニティ「Innovative Co-medical Union」(通称:ICU)を4年前から運営しています。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

ICUではどんな活動をされているんですか?

簔田さん

簔田さん

医療従事者や介護関係者の方々との交流会を毎月開催したり、勉強会も定期的に行ったりしています。ほかにも、資産形成のサポートや人材紹介など、医療・介護に携わる1人ひとりが本当に自分に向いた形で、自らの資格や経験を活かせるような環境を作ることを目標に掲げてコミュニティ活動をしています。

閉鎖的な業界だからこそ
新たなコミュニケーションの機会を

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

コミュニティを立ち上げようと思ったキッカケは何だったんですか?

簔田さん

簔田さん

私自身が臨床工学技士1〜2年目の時点で、医療業界はとても閉鎖的な業界だと感じるようになって。私は当時から病院外の集まりに顔をよく出していたのですが、医療従事者以外の方々とお話すると、いかに自分が医療のことしか知らないかを痛感したんです。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

外の世界に触れたことで見えてきたものがたくさんあったんですね。

簔田さん

簔田さん

はい。ただ、それでも医療の仕事そのものが嫌だったわけではなく、逆に私はやりがいを感じていて、その想いは業界外の方々と関わっても変わりませんでした。また、ちょうどその頃は新型コロナウイルスの流行初期で、どの業界もダメージを受けて動きが停滞するなか、医療だけはずっと動き続けていて。むしろ最前線で求められている状況に、改めて医療の重要性を実感しました。だからこそ、医療従事者がより良く仕事ができる環境について追求してみたくなったんです。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

簔田さんと同じように、業界が閉鎖的だと感じている医療従事者がやはり多かったのでしょうか?

簔田さん

簔田さん

そうですね。医療業界全体の慢性的な悩みだと思うのですが、人材不足や過重労働はどの職種においても見受けられるのではないか、と。ただ、現状にモヤモヤしていてもその気持ちを上手く言語化できない方もまた多いのではないかと思ったんです。また医療従事者は、学生時代の友人までさかのぼって考えても、皆似たような仕事をしていることが多いです。そのため、何か違うフィールドで仕事をしたいと思っても、周囲に相談できるような人がいないというケースがよくあります。そういった方がまずは自分の気持ちを素直に話せるようなコミュニケーションの場を作りたいと思ったのが、コミュニティ作りのキッカケでした。

コミュニティでの出会いが
人と人との〈縁〉をつないでゆく

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

ICUに入って変化が見受けられたような、印象深かった方はいますか?

簔田さん

簔田さん

個々人の変化とは少し違う話かもしれませんが、コミュニティでの交流が仕事のマッチングに繋がることがよくあるようで、双方にとってICUがより良い出会いの場になっていることにはコミュニティ運営の意義を改めて感じました。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

医療現場の最前線に立つスタッフだけでなく、経営側の方々もコミュニティに参加されているんですか?

簔田さん

簔田さん

はい。幅広い方に交流会に参加していただいていて、ラフなコミュニケーションを通じて、労働力を求めている方と転職を考えている方の価値感が合えば、そこで新たなご縁が生まれます。後々になって「来月から◯◯さんの所で働くことになりました」という報告を受けると、とても嬉しい気持ちになりますね。

「変化」は怖いことじゃない
新しい刺激を楽しむマインドで

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

現状にモヤモヤしているけれど動き出せない方は、おそらくコミュニティに興味があっても、上手く話せるかどうか不安で、中に入っていく勇気も出しづらいのではないかと思います。こういった不安を払拭できるようなメッセージを、コミュニティの作り手である簔田さんからぜひいただきたいです。

簔田さん

簔田さん

確かに、コミュニティへの参加にどこか抵抗感を感じたり身構えてしまったりする方は多くいる印象を受けます。参加のハードルを下げることは私たちの課題の1つでもありますね。ただ私としては、自分の中で何かくすぶっているものがあるのなら、とにかくまずは「動く」ことが大事だとも思っています。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

と、言いますと?

簔田さん

簔田さん

コミュニティの参加というより、もっと小さい所から始めてみてほしくて。たとえばいつもと違う電車に乗って通勤してみるとか、食堂でいつもと違うメニューを頼んでみるとか、そういった些細な変化でも成功体験になり得ます。「新しいことをやるって楽しいな、達成感があるな」と思えるはずです。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

変化は決して恐れるものではないということですね。

簔田さん

簔田さん

そうですね。それに、そもそも技術の進歩がめざましい医療業界に携わる方々は、仕事だけに限って言えば、むしろ変化に対するハードルが低いと思うんです。積極的に新しい技術を学んで、学会に出ている方が多くいらっしゃいます。仕事において新しいことを吸収し続けられるのは、医療従事者にとってそれが当たり前だからです。この「新しいことにトライする」というアクションを、仕事以外の部分でもぜひ同じようにやってみてほしいところですね。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

なるほど。ベクトルが違うだけで、アクション自体は確かに同じことかもしれませんね。

「本音」を引き出すためには
地道な関係構築が大きく作用する

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

新しい一歩を踏み出したいけれど勇気が出なかったり気持ちが曖昧だったりして現状にとどまっている方と、言わば公務員的思考で「国家資格に基づいている安定した仕事だから今のままで十分」と思い、現状維持を選んでいる方もいるのではないかと感じています。現状から変化しないという意味ではこの両者は一見同じように見えますが、簔田さんは双方をどう見極めていますか?

簔田さん

簔田さん

正直にいうと、ワークスタイルやライフスタイルに関して、不満がゼロの人はまずいないのではないかと思うんです。本当にゼロなのであれば、もちろんそのまま楽しく働き続けるのが一番です。ただ、人間関係や漠然とした将来のお金の不安など、大なり小なり何かしら抱えている方が多いと思います。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

確かに、悩みや不満が何にもないという方はなかなかいないような気がします。

簔田さん

簔田さん

私は現役で病院で働いている身でもあるので、コミュニティ活動だけに振り切っている人よりは現場の医療従事者に接触しやすいという強みがあります。先ほどもお話したように、閉鎖的な環境がゆえになかなか自分の本当の気持ちに気付けない医療従事者の方々は本当に多いと思うので、気軽に参加しやすい交流の場をたくさん作ることを意識しています。交流会といっても堅いものではなく、飲み会のようなざっくばらんとした雰囲気です。まずはシンプルに場を楽しんでもらうことが関係構築の最初の1歩になるかと思うので、そこから関係を深めていくとその方の本音を引き出しやすくなります。

利益の追求よりも
〈志〉に基づいたコミュニティ作りを

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

この媒体はまだ社会に出る前の学生さんや、若年層の医療従事者が読者に多くいるのですが、その中には簔田さんのようにコミュニティを作ることに興味があったり人を集めて何かしたいと考えたりしている方もいると思います。そのような方々に向けて、コミュニティ作りの心得をぜひ伺いたいです。

簔田さん

簔田さん

私自身、実際にコミュニティ作りの相談を受けることがあるのですが、実はあんまりおすすめはしていないんです。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

そうなんですね…!ちなみにその理由は?

簔田さん

簔田さん

「コミュニティを作りたい」「みんなを集めて何かやりたい」という想いの本音の部分では、ビジネスとして成り立たせて利益を得ることを少なからず求めていると思います。ただ正直、利益のことを考え始めるとコミュニティは基本的に長続きしません。最も長続きするのは、家族や学校といった一切の打算がないコミュニティです。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

なるほど。では簔田さんは、利益のことはあまり追求せずにこれまでコミュニティ運営を?

簔田さん

簔田さん

そうですね。コミュニティの価値の出し方については立ち上げ当初からずっと考え続けていて、まずはとにかくたくさんの人と会うようにしました。利益にならないイベントも4年間たくさんやって、ビジネスの視点で見ると私はかなり甘いことを自覚しています。本来であればしっかりマネタイズできるくらいの人数には会ってきていますし、もっと賢く稼ぐためのアクションにフォーカスする方法もあったはずです。ただやっぱり、そこに焦点を当てた場合、コミュニティとしては破綻していたのではないか、と。実際、1年ほど前に有料会員版を作ったことがあったのですが、上手くいかず早々にリセットした経緯もあります。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

収益については別の部分で担保し、コミュニティ運営は元々持っていた志に基づき、打算なしにたくさんの人とつながることを考えていったほうが長く続くということですね。

簔田さん

簔田さん

お金にならない活動にこそ、力を入れてほしいなとは思いますね。併せて、おっしゃっていただいた通り、その活動を続けるためのキャッシュポイントを作ることがコミュニティ運営を続ける秘訣かと思います。

医療従事者の働き方の幅を広げ、
交流の場の提供をこれからも

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

最後に、今後の展望について教えてください。

簔田さん

簔田さん

頭の中にある働き方の選択肢がとても狭い医療従事者が多いと感じているので、コミュニティでの勉強会などを通じて、選択肢を広げるお手伝いを引き続きしていきたいと考えています。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

選択肢が広がると、その方にとってのより良い働き方に出会える可能性もぐっと高まりますよね。

簔田さん

簔田さん

そうですね。また、なかなか自分の気持ちを素直に話せない医療従事者が、安心して楽しめる場もこれからもっと提供していきたいです!

【インタビューに答えてくれたのは…】
簑田 拓磨(みのだ・たくま)さん
臨床工学技士/医療コミュニティ“Innovative Co-medical Union”代表

<活動>
医療従事者コミュニティ運営・医療従事者向け金融教育事業・交流会開催・人材紹介

<経歴>
2011年 大阪電気通信大学医療福祉工学部へ入学
2015年 大学卒業後、兵庫県立こども病院入職
2018年 桜橋渡辺病院へ転職
2020年 医療従事者コミュニティ"Innovative Co-medical Union"発足
2023年 コミュニティからサロン形式の有料版を開設するが、運営陣の方針が合わず、コミュニティを解体。新たに一からコミュニティ形成し、現在に至る。
https://www.instagram.com/icu_minochan