対談インタビュー
人をつなぐ〈縁〉と〈愛〉を大切に。未来への布石を打ち続ける薬局薬剤師
今回インタビューにお答えいただいたのは、整形外科医として働きながら、並行してインフルエンサー活動も行われているたかきさん。現役医師であるたかきさんがInstagramを通して精力的に発信をされている理由や、医師としての心得のほか、未来に対して抱いている展望、新しいことにチャレンジされる方への頼もしいメッセージなどを伺ってまいりました。
編集者
クラミー
まず、現在の仕事内容を教えてください。
たかきさん
いまは、整形外科医として病院で働いています。
編集者
りょうちゃん
医師のほか、インフルエンサーの活動もされているとお聞きしました。
たかきさん
インフルエンサーというほど大層なものではないかもしれませんが、病院での医者の働き方や、看護師や患者との関わり方をリアルに伝えるために、Instagramを使って発信を行っています。
編集者
クラミー
外に向けて発信をされようと思ったキッカケは何だったのでしょうか?
たかきさん
大学6年生のときに、当時医者1年目だった1つ上の先輩から食事に誘われたんです。先輩が医者になって半年ほどのタイミングだったのですが、仕事に関して「やっぱりキツい」とおっしゃていて。だんだん話が重くなる一方で、同時に「絶対死ぬなよ」とも言われました。というのも、僕の出身大学では、3年連続で研修医1年目の自殺者が発生してしまっていて。大学を卒業して医者の道に進むのは毎年120人ほどしかいないのに、120分の1で亡くなる人が出てきてしまうのかと驚愕しました。それほどに医者の仕事がハードだということをリアルに発信することができれば、後輩たちにも実態が伝わるのではないかと考えて始めたのがキッカケです。
編集者
りょうちゃん
確かに、その業界に入る前と入った後でのギャップをあらかじめなくしておくという意味でも良いことですよね。
編集者
クラミー
実際にたかきさんが医者になった際は、聞いていた通り「キツい」と感じましたか?
たかきさん
そうですね、かなり病みました。当時は秋田県で働いていたのですが、秋田は高齢化率が日本一にもかかわらず医者がかなり少ないんです。「それならたくさん経験を積める」と考えて最初は大阪から出てきたのですが、医者が足りていないので当直が月に7回とかなり多かったり、ほかにも「オンコール」という呼ばれたらいつでも駆けつけなければいけない日が2日に1回あったりと、身体が全然休まらなくて。次第に気持ちも落ち込んでいって、無断欠勤を重ねながら何とか持ちこたえていた時期がありました。
編集者
りょうちゃん
強制的に休むことも、自分の身を守るためには時に必要ですよね。私たち患者側からすると、お医者さんはまるでヒーローのように映ってしまいますが、とはいえ同じ人間であることに変わりはないので、医療従事者のケアの必要性を改めて感じます。たかきさんがつらい時期を乗り越えられたキッカケは何だったのでしょうか?
たかきさん
研修医時代はさまざまな科を回っていて、特につらかったのが循環器内科でした。当時は筋トレだったりサウナだったり、メンタル回復に効くと言われているものを色々試してみたのですが、どれも効果は感じられなくて。ただ、循環器内科での研修ローテーションが終わった翌日に、不調がパッタリと治ったんです。
編集者
クラミー
えっ!何をされても治らなかったのに…!?
たかきさん
やっぱり環境なのかな、と思いました。根本をどうにかしないと治るものも治らないんだな、と。
編集者
りょうちゃん
たかきさんはそんなつらい時期を乗り越えて現在も医者を続けられていますが、状況によっては「逃げること」も必要だと思われますか?
たかきさん
大事ですね。逆に僕はローテーション制の研修医のシステムに助けられた部分がありましたが、例えば上司などの“人”につらさの要因があったとしたら、できることなら距離をとったほうがいいと思います。逃げは決して悪いことではないので。
編集者
クラミー
『みんなの履歴書』の読者の中には医療人を志している学生の方が多くいるのですが、医療業界に入るにあたっての心得やアドバイスなどはありますか?
たかきさん
医者を始めとして、医療従事者は病院の中の世界にしか目を向けなくなってしまうので、どうしても視野が狭くなりがちです。なので、医者以外の友人を作ることをおすすめします。病院は本当に特殊な場所で、「ここだけが世界のすべてじゃない」という意識があるだけでも物事の見え方はかなり変わってくると思います。
編集者
りょうちゃん
病院のどんな所が特殊だと思われますか?
たかきさん
一番は、医者の態度がどうしても大きくなりがちな所です。立場上各所に指示を飛ばすので「医者が偉い」という認識は間違いではないのかもしれませんが、かといって、薬の営業で訪ねてきた方やコメディカル(医師を除く医療従事者)の方々に対して必要以上に強い言い方をするのはどうなのかな、と疑問に思います。全員が全員そうではないとは思うものの、病院独特の空気感を「こういうものだから」と多くの人が当然のこととして捉えてしまっているのが変な所だな、と僕は感じています。
編集者
クラミー
たかきさんは現在医師4年目とお聞きしたのですが、これからどんどん活躍されていくことが望まれている一方で、先輩方とのコミュニケーションも多いと思います。目上の人との接し方で気をつけていることは何かありますか?
たかきさん
これは僕がいま働いている病院の先輩方が良い人ばかりだからかもしれませんが、良い意味で「気を遣わない」ことです。「先生!」と変にへつらうのではなく、まずは自分がやるべきことをやったうえで、わからないことは遠慮なく先輩方に聞くようにしています。先輩だからと萎縮しすぎるのはあまり良くないな、と。
編集者
りょうちゃん
確かに、「気を遣っているな」と結構見抜かれるものですよね。
たかきさん
そうなんですよね。逆に先輩方も気を遣ってしまうと思いますし。
編集者
クラミー
医師になるにあたって、まず最初に通る道が研修医だと思いますが、研修医としての心得もぜひお聞きしたいです。
たかきさん
こちらも同じで、あまり気を遣いすぎることのないよう距離感を意識するのが大事だと思います。ただ僕の場合、研修医の頃は医師の先生方に対して緊張していたせいか、かなり距離をとってしまっていました。でも結果的にコミュニケーションコストが下がってしまうだけですし、「あいつはそっとしておこう」と先生方からも思われていたような気がします。研修医時代は飲み会などが少なかったのでなかなか親しくなりにくかったのですが、オフの場でのコミュニケーションの機会は積極的に参加したほうがいいといまは思います。
編集者
りょうちゃん
確かに、チームワークの向上にもきっとつながりますよね。
編集者
クラミー
個人でのアカウントのほか、たかきさんは看護師の方とも共同でInstagramでの発信を行われていますが、医師と看護師のコミュニケーションも仕事においてはかなり重要ですよね。
たかきさん
そうですね。仕事上かなり密に接するので、先ほどの話とも重なりますが、態度が大きすぎる医師は看護師から嫌われてしまうと思います。通常業務のプラスアルファを看護師が善意でやってくれることがあって、これにはかなり助けられているのですが、嫌われてしまうときっとやってくれなくなるんじゃないかな、と。僕も当直や夜勤のときには差し入れを持っていったりするなど、お互いに気を配り合うことが大事だと思います。
編集者
りょうちゃん
業務を円滑に進めるためには、気遣いが欠かせないということですね。
たかきさん
それから、看護師ひとりひとりの名前を覚えることもとても大切です。ただ、これは案外ハードルが高くて…。
編集者
クラミー
そうなんですか…!?
たかきさん
全員マスクをしているうえに、みなさん年齢が若くて服装も同じなので、名前をちゃんと呼び分けることが意外と難しくて。だからこそ、医師から名前で呼ばれると看護師は喜ぶらしいんです。Instagramの発信を一緒に行っている相方の看護師がそう言ってました。
編集者
りょうちゃん
確かに、「看護師さん」ではなくでちゃんと名前で呼ばれるのは、ひとりの人間として見られているような気がして嬉しくなりますよね。
編集者
クラミー
今後の展望について教えてください。
たかきさん
医師としては4年目、まだまだ修行中の身なので引き続き医療技術を磨いていくのはもちろんですが、加えて「患者さんを満足させること」を最終ゴールとして掲げています。そのゴールを目指す手段として「病気を治すこと」があると思うのですが、この手段が目的になってしまっている人が多いような気がしていて。治す過程で患者さんがどんなに苦しい思いをしたとしても、嫌がっていたとしても、「治療だから」と処置を施そうとするのが正しいことだと考えている医師はきっと少なくありません。
編集者
りょうちゃん
たかきさんは、医師としてまた別の姿を目指されていると…?
たかきさん
はい。患者さんの気持ちに寄り添うことをより意識したいので、接客の部分をもっと学んでいきたいと考えています。基本的に、患者さんに対して敬語を使わない医師がいまは多いのですが、一般的な飲食店などに置き換えたらこれはあり得ないことだと思うんです。医療技術の上達は時間がかかることかもしれませんが、患者さんとの接し方はいまからでも意識できることなので、寄り添ったコミュニケーションを心がけるようにしたいです。
編集者
クラミー
病院特有の違和感を、ご自身の手で拭っていきたいんですね。
たかきさん
そうですね。また、自分がかつて秋田で働いていたときにも感じていたことですが、地域医療の偏在はいまもなお顕著です。最近だと奄美大島の病院に見学に伺ったのですが、地方は圧倒的に人が足りていないので、医師をばらけさせるような活動を何かできたらいいなと考えています。毎日とは言わずとも、たとえば週末だけ、1ヶ月のうち1週間だけなど、状況を少しでも変えるためのアクションを起こしたいです。
編集者
りょうちゃん
現役の医師であるたかきさんにとっては、新しいツールを使った発信活動はひとつのチャレンジだったかと思うのですが、今後新しいことにトライしようとしている方だったり、新たな仕事を始めようとされている方へのメッセージをぜひお願いします。
たかきさん
僕自身、おそらく病院では変な目で見られていると思うんです。ただ、〈当たり前〉に決して囚われずに、むしろ周囲からの視線を快感に感じるくらいの心持ちでいたほうがいいんじゃないかな、と。
編集者
クラミー
確かに、人の目を気にしていたらきっと何もできなくなってしまいますよね。
たかきさん
そうなんですよね。僕の場合は特に外に向けて発信しているので、どうしても多くの人の目につくのですが、基本的に応援してくれているはずだと思うようにしています。「社会を良くするために行っている」というぶれない軸さえ持っていれば、きっと何でもできるはず。批判的な意見は気にしすぎず、僕と一緒に頑張りましょう!
【インタビューに答えてくれたのは…】
たかきさん
整形外科医
インフルエンサーとしても活動中
Instagram:https://www.instagram.com/muchi_dr/
看護師さんとのInstagram:https://www.instagram.com/takaki.rin0703/