対談インタビュー
人をつなぐ〈縁〉と〈愛〉を大切に。未来への布石を打ち続ける薬局薬剤師
今回インタビューにお答えいただいたのは、人材派遣・人材紹介・採用支援の3事業を展開している株式会社ナラティブ・ガイドの代表取締役・乾達哉さん。派遣のプロフェッショナルである乾さんが見続けてきた医療人の働き方の変化や、キャリアとの正しい向き合い方などに関するお話をたっぷり伺ってまいりました。
編集者
クラミー
まず始めに、現在の仕事内容について教えてください。
乾さん
いまは、株式会社ナラティブ・ガイドという会社の経営をしています。2022年の9月に創業しました。医療有資格者・介護有資格者を中心とした人材派遣業、人材紹介業、それから人材を必要としている病院や老人ホームに対する採用支援業の3つを事業の柱としています。
編集者
りょうちゃん
現在の仕事に至った経緯についても併せてお伺いしたいです。
乾さん
大学卒業後、株式会社パソナという人材派遣の企業に入社しました。そこでは事務や営業の方の人材派遣に従事し、その後、現在の事業にも通ずる医療有資格者の人材紹介・人材派遣を行っているパソナメディカルに出向しました。トータルで7年ほど働いたのち、当時上司だった方が医療有資格者の人材サービス会社を立ち上げたので、2002年にそちらにジョインしました。その会社では各支店長や営業部長などを務めさせていただいて、およそ20年間働き、独立・起業していまに至る形です。そのため、合計約25年間、同じ業界で医療・介護の人材派遣や人材紹介の仕事に携わり続けています。
編集者
クラミー
いわば、派遣のプロフェッショナルですね!
乾さん
ありがとうございます。医療・介護の人材サービスは比較的ニッチな業界なので、そこに関しては他の人に負けない経験や知識があると自負しています。ただ逆に言えば、業界外のこととなると途端に疎くなります(笑)。
編集者
りょうちゃん
長年派遣業界を見てきたなかで、時代の流れによる変化は何か体感されていますか?
乾さん
一番は法律の部分ですね。労働者派遣法という法律があるのですが、この法による変遷はかなり感じました。
編集者
クラミー
実際にどのような変化があったのでしょうか。
乾さん
2000年以前だと、ドクターや看護師といった医療有資格者は、病院やクリニック、老人ホームなども含めて基本的に派遣はできないと定められていたんです。ただ徐々に、老人ホームやデイサービスといった医療機関以外の施設であれば派遣が認められるようになっていきました。病院やクリニックはまだ厳しい部分があったのですが、それもまた時代の流れに応じて、産休や育休で抜けたスタッフの代替であったり、後の直接雇用を前提とした「紹介予定派遣」であったりするのであれば派遣可という風に変わっていったんです。
編集者
りょうちゃん
少しずつ柔軟になっていったんですね。
乾さん
そうですね。他にも最近のコロナ禍だと、各地に設けられたワクチン会場は医療行為が伴う場所なので通常は派遣ができないのですが、例外的に看護師の派遣が認められました。そういったように、世間的・現場的な需要、さらには政治的な要素も絡んで、業界の様相はその時々に応じて変わりつつあります。
編集者
クラミー
派遣登録をされている方々の働き方も、時代とともに変化しているのでしょうか?
乾さん
はい、働き方においても多様化が見受けられます。例えば、臨床の仕事に疲弊してしまった看護師さんが、心身を少し休ませるために派遣として半年間だけ老人ホームで働いたり。あるいは完全に派遣1本で仕事をしていくことに決めて、半年間老人ホームで働いたらその次はデイサービスで働いたり、さらには単発で修学旅行や林間学校の添乗をしたりするケースもあります。
編集者
りょうちゃん
ひと昔前では考えられなかった、フレキシブルな働き方が実現しているんですね。看護師などの本業を続けながら、副業で別の仕事にもチャレンジしたい方にとっても派遣という働き方は親和性が高いように感じられます。
乾さん
おっしゃる通りですね。1人ひとりのスタイルに合わせた働き方を叶えやすいシステムが出来上がってきていると思います。
編集者
クラミー
フルタイムではなくパートタイムや、派遣の仕事だけに従事する働き方などさまざまなケースがあるかと思いますが、労働形態としてはどのような割合になっているのでしょうか。
乾さん
看護師の場合、いまでも圧倒的に多いのは病院です。看護師免許を持っている方のうち7割は、病棟で勤務されています。2割はクリニック、残りの1割は先ほどお話させていただいた老人ホームや旅行の添乗のほか、製薬業界で薬の開発をサポートをするような仕事に就かれています。割合としてはまだ少ないかもしれませんが、自由度をもって働く方が増えてきてはいます。
乾さん
また、現場に復帰したいけれども主婦業などのブランク期間が長くて戻りにくいという方にとっても、派遣の仕組みは機能しています。
編集者
りょうちゃん
と、言いますと?
乾さん
例えば、元看護師で20年間主婦だった方が、病棟看護師や在宅訪問看護などの仕事をしたいと思っても、なかなか復帰しづらいのが現実です。そんなときに、最初は派遣という形態で、訪問看護ではなく訪問入浴やデイサービスなど、看護師技術をそこまで必要としない場で慣れていって、仕事の感覚を取り戻しながら最終的には病院や訪問看護ステーションなどに就職をする、といった流れは十分実現可能です。
編集者
クラミー
なるほど…!派遣は、あらゆる状況に対応しやすい働き方なんですね。では逆に、看護師の学校を卒業して、すぐに派遣登録をされるような方もいまはいらっしゃるのでしょうか?
乾さん
ほぼいらっしゃらないですね。9割方は病院に就職します。基本のファーストキャリアはやはり昔も今も変わらず病院ですし、しばらくは看護師として仕事を続けていきたいという気持ちがあるのであれば、私個人としても最初の3〜5年は病院に勤務するのは外せない部分かなと思います。
編集者
りょうちゃん
経験を積んでいくなかで、基盤をある程度固めておくのはやはり大切なんですね。
乾さん
そうですね。ただなかには、どうしても臨床の仕事が身体に合わないという方もいらっしゃいます。例えば、最近キャリア相談でお会いした看護師の有資格者の方は、養護教諭の仕事に興味があって、正看護師のライセンスがあると1年間だけ学校に通えば養護教諭資格が取れるので、そちらにシフトされていました。医療職から完全に離れるケースだと、看護師の知識を活かしながらキャリアアドバイザーとして仕事をされている方も稀ですがいらっしゃいます。医療有資格者は医療機関で働くのが従来のイメージでしたが、最近だと起業するドクターの先生方もいらっしゃったりと、本当にさまざまな働き方が広がっています。
編集者
クラミー
今後何か新しいことをしたい」「動き出したいけどどうすればいいんだろう」と思われている医療人の方がこの媒体の主なターゲットなのですが、そういった方々に対して、多様な働き方を知っている乾さんだからこそできるアドバイスがあればぜひお聞きしたいです。
乾さん
インターネットで情報を探される方がいまは多いですが、そこに載っている情報だけを鵜呑みにしないほうがいいかなと思います。例えば、どうしても夜勤が身体に合わない病棟看護師の方が、夜勤が確実にない仕事を新たに探そうとしたとき、「日勤帯のみの看護師=美容」というひとつの選択肢しか知らずにそちらに進んでしまうケースがあります。
編集者
りょうちゃん
先ほどお話されていたような多様な働き方こそ、それぞれ新たな選択肢になり得ますよね。
乾さん
おっしゃる通りです。もちろん美容が悪いわけではありませんが、例えば訪問看護や製薬会社などの企業での仕事など、夜勤がない看護師の仕事はたくさんあります。そういった情報をキャッチしていくためには、ネットだけではなく人に会って話を聞くのも大切です。多様な働き方を熟知しているキャリアアドバイザーの方に相談して、最適なサポートやアドバイスを受けるのが一番良いと思います。
編集者
クラミー
ぜひ、乾さんの元へ、ですね!
乾さん
であればありがたいですね(笑)。お待ちしています!
編集者
りょうちゃん
人材サービスの仕事に長年携わってきた乾さんなりの、「転職すべき」「いまの仕事にとどまるべき」といった見極め方のポイントについて教えてください。
乾さん
まず一番のポイントは、先ほどの話と重複しますが、ファーストキャリアを病院の臨床の場である程度積んでいるかどうかです。例えば、まだファーストキャリア1年目の方が「給料が良いから」「キラキラしているから」といった理由で美容業界に転職しようとするのはあまりおすすめできません。もちろん、興味本位ではなく確かな本気をもって、10年後も20年後も美容の世界で食べ続けるんだという覚悟があるのであれば止めませんが、キャリアのビジョンがそこまではっきりと描けていないのなら、せめてあと2年はいまの職場で頑張りませんかという話はします。キャリアは、〈今〉と〈未来〉の2軸の視点で考えるべきです。
編集者
クラミー
なるほど。いま現在の気持ちだけに囚われず、いかに先を見据えられるかが重要なんですね。
乾さん
はい。ただもちろん、逆のケースもあります。つい最近、病院のオペ室で3年間ファーストキャリアを積んだ後に、違う病院に移って病棟看護師として半年間勤務されていた方とお話をする機会がありました。ただ、その転職先の病院は残業も夜勤の回数も非常に多くて、頑張りすぎた結果うつを患ってしまったんです。その後半年間休職をして職場復帰されたのですが、結局状況は変わらなくて最終的には仕事を辞めました。私の会社に相談に来られたのは退職された後だったのですが、もしもっと早いタイミングでその方とお話がで来ていれば、休職の時期を早めたり、職場環境が変わる気配がないのであれば退職も速やかに提案させていただいていたと思います。
編集者
りょうちゃん
病院の中にいると、どうしても病院内の先輩や同僚にしか相談できないと思いがちかもしれませんが、その場合どうしても目線が同じになってしまいますよね。そんなときこそ、キャリアに詳しい外部の方に相談することが大事だということがわかりました。相談自体は無料ですし、何か悩みを抱えていたらぜひ足を運んでほしいですよね。
乾さん
そうですね。最終的に決断するのはあくまでご本人ですし、相談相手のご経験によってはもらったアドバイスを盲信しすぎるのも逆に良くない場合もあるかもしれませんが、第三者の話を聞いてみるのは選択肢を増やすことにつながると思います。
【インタビューに答えてくれたのは...】
乾達哉(いぬい・たつや)さん
株式会社ナラティブ・ガイド 代表取締役 人材採用・定着アドバイザー
医療従事者の人材派遣・人材紹介・採用支援(代行)会社
みんなの履歴書協賛企業
HP:https://nguide.jp/