対談インタビュー
健康寿命を延ばし、幸せな時間を増やす。スポーツトレーナー×薬剤師が広げる健康の輪
今回インタビューにお答えいただいたのは、調剤薬局で薬剤師として働きながら、スポーツトレーナー、ボディビルダーとしても活躍する、北川さん。「健康寿命を延ばし、幸せな時間を増やす」という信念のもと、薬剤師としての専門知識や、スポーツトレーナーとしての知識を生かしながら、地域の方の健康をサポートしています。今回は、ボディビルへの挑戦や、高齢者に向けての体操教室など、北川さんならではの取り組みをたっぷりと伺ってまいりました。
編集者
クラミー
まず始めに、現在の仕事内容について教えてください。
北川さん
調剤薬局での薬局業務に加え、その会社でパーソナルトレーナーとして運動教室を開催しています。
編集者
りょうちゃん
調剤薬局と運動教室とは珍しい組み合わせですね!どのような経緯で始められたのでしょうか?
北川さん
今勤めている薬局に、トレーニングジムが併設されているんです。元々手付かずの状態だったのですが、私自身「予防」の観点に興味があったので、そこを活用してゆきたいと思い入社しました。現在、そのジム自体は閉局してしまったのですが、運動の知識や指導実績を活かして、別の店舗などを利用して高齢者に向けた運動教室を実施しています。
編集者
クラミー
薬剤師とパーソナルトレーナー、もともとはどちらに興味を持って始められたのですか?
北川さん
もともとは薬学部へ進学して薬剤師になったのが先でした。社会人1年目の時にジムに行って本格的なトレーニングを始めた際に、身体が変わって健康になることを実感して。そこで、病気を抱えて薬局へ訪れる患者さんに対しても、身体を変えて健康になることが予防につながるのではないか?と考え、予防×トレーニングの勉強をするようになりました。
編集者
りょうちゃん
自分の身体が変わった経験から、それを伝えていくべくトレーナーになられたのですね!
編集者
クラミー
インスタグラムなどでも、ボディビルコンテストでの薬剤師さんとは思えない鍛え上げられた肉体を拝見しました!
北川さん
ありがとうございます。もともと比較的に筋肉質ではあったのですが、2年前にトレーナーさんの薦めでボディビル大会に出場することになり、その大会出場を目標に、お米中心の食生活へと変えて本格的に鍛え始めました。2年前の大阪大会では準優勝だったのですが、その悔しさをバネに1年越しに挑戦した2024年大会では、大阪大会、関西大会で優勝することができました。
編集者
りょうちゃん
正社員として勤められながら、ボディビルディングも両立されていたのですか?
北川さん
仕事の昼休憩の間にトレーニングすることをルーティーン化していました。休憩になった瞬間移動して、おにぎりを食べながら40分間トレーニングをし、また職場に戻る、というふうに。
編集者
クラミー
昼休憩中に!体が休まらなさそうです・・・!
北川さん
意外とトレーニングが良いリフレッシュになるので、ルーティーン化してしまえば続けることが出来たんです。夜は子どもの世話をしなければならず時間が取れないので、お昼の間だけは何があってもトレーニングすると決めていて。もちろん休日は時間を増やしましたし、お米を中心とした食事管理や、自分の身体を知るための遺伝子検査など、できることは全部やっていました。
編集者
りょうちゃん
やはり徹底した管理が必要になるのですね!ボディビルディングで学ばれたことを活かしたトレーナーとしてのお仕事もあると思いますが、これからもどちらか1本に絞らず、薬剤師と両立していかれるのでしょうか?
北川さん
はい。トレーナーとして優れた方はたくさんいますが、トレーナー×薬剤師という人はまだまだいないと思うので、私自身の強みとして両立は続けていきたいです。また、トレーナーとしてアプローチするよりも、薬剤師としてアプローチした方が、「健康寿命を延ばして幸せな時間を増やしたい」という目標に近づきやすいと思うんですよね。
編集者
クラミー
運動教室は、最初はどのように集客していかれたのでしょうか?
北川さん
もともと今の会社が大阪府の「アスマイル」という健康事業と連携していたので、大阪市が主催する公民館での体操教室などに、トレーナーとして参加していたんです。そのうちお客さんが定着してきたので2,3年ほど前から、市から委託される形で私個人でやっています。現在は一回7名1時間ほどの教室を週1回実施したり、薬局にポスターを貼って地域住民の方に告知し、月に一回ほどイベントを開催したりしていますね。
編集者
りょうちゃん
薬局という機会や信頼が、北川さん個人でも集客できたことに繋がっていそうですね。
北川さん
運動をしたいけれどトレーニングジムに行くにはハードルが高かったり、きっかけがなかったり、という人が結構多いんです。そんな時に、薬局から集客することが一個参加のハードルを下げることにつながっているな、と実感しています。
編集者
クラミー
医療に携わりながら、自分だけの付加価値を見出してゆくには、難しいこともあると思います。これから自分の道を見つけて働いてゆく読者の方に、アドバイスはありますか?
北川さん
薬剤師という仕事は良くも悪くも色をつけにくい職業ですが、やはり自分の「軸」に従って動くことが大切だと思います。例えば痛みがしんどくて楽しい時間を過ごせない、という人がいたとき、僕の場合は「健康寿命を向上して、その方々の幸せな時間を増やす」という軸で動いるので、痛みを改善して健康な時間を増やすことができる、というように。もしその人の軸が「楽しくさせたい」のであれば、楽しいイベントを開催するなど、他のアプローチができるんです。自分なりの軸を持つことで自分の行動に移しやすくなると思います。
編集者
りょうちゃん
なるほど。自分の軸から逆算することで、自分なりの行動に繋がりますね!そんな北川さんのお仕事の中で、印象に残っている出来事はありますか?
北川さん
勤めている店舗に学生さんが実習にくることがあるのですが、その学生さんたちに高齢者の方と一緒に運動教室に参加させてみると、面白いことに若い学生さんの方が早くバテてしまうんです。60代〜80代の方でも、継続して毎週1時間運動すると体力がついてくるな、と実感できて、嬉しい出来事でしたね。
編集者
クラミー
学生よりも体力がつくなんて!まさに継続は力なりですね。北川さんはもちろん、高齢者のみなさんも嬉しかっただろうと思います。
北川さん
また、ジムでパーソナルトレーニングをしているときに、軽い脳梗塞の影響で手が痺れてしまう方がいたのですが、トレーニングやストレッチングをしているうちに痺れがなくなったことがあって。直接的な要因ではなかったかもしれませんが、もしかしたら筋肉の動きや神経の圧迫が影響したのではないかな、と印象に残っています。その患者さんは今でも継続して来てくださるのですが、日常に問題なく動けている様子を見ると、とても嬉しくなりますね!
編集者
りょうちゃん
患者さんと継続的に関わっていけることも、北川さんならではの付加価値になりますね。私はお話を聞くまで、処方箋を持っていないと薬局に行けないものと思っていました。薬剤師さんにアドバイスを貰いに行くこともできるんですね。
北川さん
「医薬分業」といって医者と薬局が両方から監査するために処方箋を扱っているのですが、そもそも薬局というものは薬店、つまりドラックストアの業態から始まっていて、患者さんが「ちょっとしんどいんだけど…」と相談できる場所だったんです。「セルフメディケーション」という言葉が広がり、処方箋がなくてもOTC医薬品で自分の健康管理をしましょう、と言われている現在、薬局は気軽に相談できる場所へと原点回帰する必要があると考えています。
編集者
クラミー
たしかに私も、体調が悪い時にネットで調べた知識だけを頼りにドラックストアで薬を購入することがあります。
北川さん
そんな時に薬剤師が症状をしっかりと聞いてあげられたら、「あなたは緊張型の頭痛だからこちらの薬の方が効きますよ」と教えることができるんです。さらに、「緊張型の頭痛は肩こりや血流不全からくるので、このように肩の体操をしたらいいですよ。」「入浴剤を使って血流を良くするといいですよ」とフォローアップもしてあげられます。
編集者
りょうちゃん
オンラインでの処方や、AIの案内ではできない、専門的な知識を持つ薬剤師さんだからこそできるフォローですね!
北川さん
そうなんです。処方箋通りに薬をお出しすることはAIやロボットにもできるかもしれませんが、患者さんのお話を継続的に聞いたり、雰囲気や体調を見たりしながら提案していくのは、やはり薬剤師だからこそできることだと思っています。
編集者
クラミー
最後に、今後の展望をお聞かせください。
北川さん
スポーツトレーナーをしている薬剤師、という私自身は全国でも珍しいと思いますが、もっと仲間を増やして、薬局での運動教室を広げていきたいです。実際に薬局の現場でも、患者さんに「運動してくださいね」とはいうものの、具体的に何をすればいいのかお伝えできない薬剤師が多いんです。そこで、実際に薬局の中で患者さんと身体を動かして説明できる薬剤師や、その場所を増やしていきたいと思っています。また、パーソナルトレーナーさんやジムと連携することで、患者さんの健康を双方向から支えていけるような関係を築いていけたらいいな、と。
編集者
りょうちゃん
確かに、素人がパーソナルトレーニングへいっていいのかな?と不安に思っていました。信頼できる人からの紹介があれば、そのハードルが下がりますね。
北川さん
そうなんです。トレーニングってそもそも運動へ興味がある方が始めるイメージがありますが、薬局側からアプローチすることで、普段運動しない方も気軽に始めるきっかけになると考えています。最終的には「健康寿命を延ばして幸せな時間を増やす」ことが目標なので、まずは同じ目標を持つ仲間を増やし、全国に健康の輪を広げていければな、と思っています。
編集者
クラミー
貴重なお話しを、ありがとうございました!
【インタビューに答えてくれたのは…】
北川 俊一さん
薬剤師、ボディビルダー
〈経歴〉
2012年4 月 クオール株式会社新卒として入社
2016年4月 株式会社 M&Cに入社 現在に至る
2023年7月 大阪クラス別ボディビル選手権大会準優勝
2024年6月 大阪クラス別ボディビル選手権大会優勝
2024年7月 関西クラス別ボディビル選手権大会優勝