キッカケは「未病」への関心
東洋医学の考えに共感し、志した鍼灸師

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

まず始めに、現在の仕事内容について教えてください。

嶋崎さん

嶋崎さん

職業は鍼灸師で、ホルモンバランスに寄り添う婦人科特化型の施術を行っています。例えば生理痛や生理不順、PMSのほか、多嚢胞卵巣症候群(PCOS)や子宮内膜症などの婦人科疾患系が治療の対象です。さらに、妊活に関わる施術も業務の軸として行っています。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

元々、鍼灸師になられたときから婦人科に特化しようと思われていたんですか?

嶋崎さん

嶋崎さん

いえ、そもそも最初は鍼灸師を目指していたわけではなかったんです。昔スポーツをやっていたときに腰のヘルニアに悩まされていたことがキッカケで、最初はスポーツトレーナーになろうと思い専門学校に通っていました。スポーツトレーナーになるためには、必ず国家資格が1つ必要で。これは鍼灸師のみならず、理学療法士(PT)や柔道整体師など、国家資格であれば何でもいいんです。その際に私が選択したのが鍼灸師でした。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

なるほど。ちなみに、数ある国家資格のなかで鍼灸師を選ぼうと思った理由は何だったのでしょうか。

嶋崎さん

嶋崎さん

私がヘルニアに罹ったときにお世話になったトレーナーさんが鍼灸師だったのが、最初のキッカケです。また、腰を治すために手術も受けたのですが、その際に「ここまで悪くなる前に何かできなかったのかな」とふと考えて。近頃ようやく「未病」という言葉が取り沙汰されるようになりましたが、当時の私も病気の前段階に対する働きかけについて興味を抱いていました。そこから、予防医学に強い東洋医学系に関心が寄っていったんです。人が本来持っている自然治癒力を活かして病気を治すという東洋医学の考え方に深く共感し、「もっと勉強してみたい」と思って鍼灸師の道に進んでいきました。

美容専門から婦人科特化型へ。
心と身体の両面から女性に寄り添うために

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

専門学校を卒業された後はどのような働き方をされていたんですか?

嶋崎さん

嶋崎さん

在学中に気持ちが徐々に変わり、「キラキラした美容関係で働きたい」と思って卒業後は美容鍼灸のサロンに入社しました。そのサロンでは半年ほど働き、その後現在の治療院に移った形です。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

現在のGAIA鍼灸院に来られたキッカケは何だったんですか?

嶋崎さん

嶋崎さん

美容鍼は顔にしか施術を行なわないことが多いのですが、それでも内臓が動いたり、足ツボのように多くの反射区があるので確かに効果はあります。とはいえ、いわば人の身体はまるで小宇宙。だんだん物足りなさを感じるようになり、「顔だけじゃなくて全体をトータルで見られるようになりたい」と思ったのがキッカケです。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

全体を見ることができたほうが、身体への効果の大きさも変わってくるものなのでしょうか。

嶋崎さん

嶋崎さん

そうですね。リフトアップや顔のゆがみの改善のためには、実は顔だけに治療を施しても大きな変化はなかなか期待できず、また元のお悩みが出てきてしまうことが多いんです。まったく変わらないわけではありませんが、例えばフェイスラインを目に見える形で綺麗にさせたいのであれば、股関節や足首に処置を行ったほうが、理想の状態が長く続きます。加えて、私が関心を寄せたのが“内側からの美しさ”でした。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

いわゆる「インナービューティー」ですね。

嶋崎さん

嶋崎さん

はい。ジュエリーやブランド品などで外見を着飾るのも美ではありますが、内側からあふれてくる女性の美しさというものも確かにあると思うんです。私はそこにアプローチがしたくて、心身ともに美しくなることを目指せるような、「真に人を癒せる鍼灸師」を1つのなりたい姿として掲げています。

妊活治療が報われた嬉しい報告と
1人で1から事業を運営していく難しさ

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

現在の治療院に移ってからは、より深く患者さんと向き合われていることかと思います。患者さんとの関わりのなかで、嬉しかったことは何かありますか?

嶋崎さん

嶋崎さん

妊活系をメインにしているからこそだと思うのですが、患者さんがご出産された後、赤ちゃんの写真を送ってくださるんです。その写真を見ると、改めて「この仕事をやっていて良かったな」と思えます。たくさんの方の人生に寄り添っているような気持ちになれるので、これは本当に嬉しいことです。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

赤ちゃんを授かる前からのお付き合いともなると、喜びもひとしおですよね。では逆に、大変だったことや難しかったことはありますか?

嶋崎さん

嶋崎さん

この治療院に就職し、院を任せていただいた当初は、いわば箱だけがある状態だったんです。スタッフも患者さんも1人もいないところから、自分の手で切り盛りしていかなければいけなかったので、集客には苦労しました。患者さんを安定して獲得できるようになるまでの、最初の1〜2年は大変でしたね。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

他にスタッフがいないとなると、すべて1人でやらざるを得ないですよね。相当ハードだったことが想像できますが、それでも辞めずに続けられた原動力は何だったのでしょうか。

嶋崎さん

嶋崎さん

自分に負けたくなかったんです。他の人ができているのに、自分はできないという状況が嫌で。たとえ1人でも事業を軌道に乗せている経営者の方はたくさんいらっしゃると思うので、まずはその段階まで辿り着きたいと思いました。「ここで終わりたくはない」と。できるところまでは諦めずに頑張って、それでも上手くいかなかったらそのときはそのときだ、というスタンスで続けていました。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

話を聞いているだけでも、力強い根性が感じられます…!事業を安定させていくために、何か参考にされたものはありますか?

嶋崎さん

嶋崎さん

雇われ院長のような形だったので、オーナーの計らいでコンサルの先生がよく来てくださっていたのですが、その方にはかなり助けられましたね。治療家としての心得や、数字の見方などを含め、経営の土台をすべて教えてもらいました。

迷っているならまず行動。
動いた勢いで現状は変えていける

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

この媒体の読者のなかには将来的に独立を検討されている方が多くいらっしゃるのですが、そういった方々にアドバイスをするとしたら、どんな言葉をかけられますか?

嶋崎さん

嶋崎さん

もし迷っている状況なのであれば、まずはやってみたほうがいいと思います。悩んでいるだけでは、状況は何も変わりません。現状を打破させるためには行動するしかないんです。これって実は治療と同じことで、症状を良くさせるために皆さん行動していると思います。現状を変えるための選択肢はさまざまなので、その選択肢については勉強しておいたほうがいいかとは思いますが、結局は「やってみる」が一番なんです。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

確かに、ずっと勉強しているから知識量は多いのに、肝心の一歩が踏み出せていない方が決して少なくないですよね。逆に、たくさん勉強してきたわけではないけれど、とりあえず動いてみた方のほうが現場で強いイメージがあります。

嶋崎さん

嶋崎さん

そうですね。ある程度の勢いは大事だと思います。

心は常に〈患者ファースト〉
医療人の使命を忘れなければ、自ずと道は拓ける

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

美容鍼灸をやられていたときに嶋崎さんが物足りなさを感じていたように、仕事においてどこかで停滞を覚え、「どうしたらいいんだろう」と悩まれている方もいらっしゃると思います。そんな方へのアドバイスもぜひお聞きしたいです。

嶋崎さん

嶋崎さん

医療の側面から言うと、〈患者ファースト〉を私は常に大切にしています。利益云々ではなく、まずは患者さんのお悩みを解決することが私たち医療人の仕事です。目の前にいる患者さんが抱えている問題の解決方法を一番に考え、それを伝えることができれば、自ずと患者さんはついてくると思います。それによって自分が進む道も拓けてくるのではないかと。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

たとえ同じ施術を行っていたとしても、「この人は一種の作業だと思ってやっているんだろうな」と、患者さん側にもきっと伝わるものがありますよね。

嶋崎さん

嶋崎さん

そうなんです。施術する側に自覚がなかったとしても、潜在的にでも作業の意識があると結構伝わります。身体に直接触れる仕事なので。だからこそ、患者さんのことはいついかなるときも大切に想っています。

人の些細な変化に気付けるセンサーと
ルーティン業務への対応力/治療メニューを創る思考力

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

嶋崎さんから見て、どんな方が鍼灸師に向いていると思いますか?

嶋崎さん

嶋崎さん

人のことを思いやれたり、些細な変化にも気付けたりする方が向いていると思います。例えば、来院されたときに雨が降っていたら患者さんにさっとタオルを差し出すことができるような方ですね。暑がっていたり眩しがっていたり、そういったちょっとした様子も細やかにキャッチできる方は、治療における身体の変化にも気付きやすいんです。このような察知能力は生まれ持ったものによる影響が大きいですが、今から意識することも十分できると思います。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

ホスピタリティの精神ですね。

嶋崎さん

嶋崎さん

そうですね。患者さんの身体に直接触れるような仕事を目指している場合は、周囲に対するセンサーを特に敏感にさせておくといいと思います。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

なるほど。では、鍼灸師の仕事内容の面で言うといかがでしょうか?

嶋崎さん

嶋崎さん

どのポジションにつくかにもよりますが、雇用されて1プレイヤーとして働く場合、どうしても同じ業務の繰り返しにはなりがちなので、ルーティンを飽きずに淡々とこなせる方が向いていていると思います。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

同じ業務の繰り返しだとしても、クオリティを下げないことが求められますよね。

嶋崎さん

嶋崎さん

おっしゃる通りです。ぶれずに続けていくことがとても大切ですね。対して、人を雇うような立場の場合、鍼灸業務、リーダーシップ、経営など、全てを網羅するポテンシャルが必要不可欠です。私はまだまだ未熟者ですが、近い将来、同じ志をもった鍼灸師さん達と共に、鍼灸業界を盛り上げられるリーダーを目指しています。加えて、「こうすれば身体に良いんじゃないか」といった治療方針に関わる考えを巡らせることが好きだと、それも武器になると思います。これに関しては、得意不得意がかなり分かれることなので、自分なりの治療メニューを作り上げることができる独創性の高い方は、大きい治療院さんのマネージャーや院長クラスまで上れるのではないでしょうか。

自らの経験を踏まえ
〈個〉として歩み出す未来をサポート

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

最後に、今後の展望について教えてください。

嶋崎さん

嶋崎さん

独立支援を新たな事業として展開したいと考えています。先ほども独立しようか悩まれている方に関するお話が出てきましたが、そういった方々へのコンサルを行っていきたいな、と。いまもクリニックは1人で運営しているので、この場所を利用してシェアサロンとして貸し出したり、あるいはまた別のテナントを借りて独立支援のための場を作ったりして、自分の経験をもとに多くの人をサポートしていきたいです。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

経験がある方とない方とでは、説得力がまず違いますよね。嶋崎さんのご経験は、独立を目指されている方にとって大きな光になると思います!

嶋崎さん

嶋崎さん

ありがとうございます!ひと昔前と違い、今はフリーで活動される方がどんどん増えてきていますが、その人ならではの活かし方やブランディングって、自分1人で考えているだけだとなかなか見つけづらいと思うんです。そこを紐解いていくことが私は得意なほうなので、お手伝いをしつつ一緒にチームも作っていけたらな、と。

【取材後記】
東京都江戸川区西小岩で、ホルモンバランスに寄り添う婦人科特化型の施術を行っているGAIA鍼灸院院長の嶋崎さん。美容専門の鍼灸院で施術をされていた経験を活かして、「身体の中から健やかに」を大切に、女性の身体に対する細やかな施術を行ってくださいます。生理痛やPMSのほか、多嚢胞卵巣症候群(PCOS)や子宮内膜症などの婦人科系の疾患から妊活まで、幅広い相談が可能だとか。院内には通われている皆さんからの感謝の言葉が壁一面に並べてありました。やさしくゆっくり、身体と心の声を聞いてくださる嶋崎さんのお人柄に触れるだけでも心が軽くなるはずです。
嶋崎さんへの相談はコチラから!(https://jhb.tokyo/

【インタビューに答えてくれたのは…】
嶋崎未来(しまざき・みく)さん
都内で婦人科特化の鍼灸院を経営
2017年3月 東京メディカル・スポーツ専門学校 卒業
2017年4月 株式会社ハリジェンヌ(ハリジェンヌ) 就職
2017年10月 合同会社GAIA(GAIA鍼灸整骨院) 就職
2023年11月 GAIA鍼灸院として独立