接触機会を減らすため、病気を抱える親族のお見舞いもままならず、寂しい思いをした人もいるでしょう。診療内容においても遠隔で可能な領域が増え、従来の考え方とは異なる、デジタルトランスフォーメーションを取り入れた工夫もなされるようになりました。
例えば、制度として「オンライン服薬指導」が解禁になり、「電子処方箋」もスタートしました。実利用はまだまだ少数であり、普及には時間がかかりそうですが、病院で受診し、処方箋を紙面で受け取り、薬局で薬をもらう、という従来型のやり方も、将来変わっていくことが予想されます。
上記制度変更を背景に、通販最大手の一社として有名なアマゾンジャパン合同会社は、2024年7月に「Amazonファーマシー」をリリースしました。今までにないコンセプトにて提供される同サービスは、医薬品流通に一石を投じる存在となりそうです。
利用者にとってメリットとなる大きな特徴としては、薬を自宅で受け取れるようになることです。薬局での処方を待つことなく、時間の節約に繋がりますし、既存ユーザーには馴染みがあるインターフェースが使え、またアマゾンの強みである物流システムにより、配送状況が明確で安心です。
他方、ある観点から見れば、薬局の脅威となりそうなサービスですが、現状では服薬指導が課せられている中、その段階には至っていません。アマゾンと連携することにより、かえって自局の評判が上がり、利用者が増えることも想定されます。
禍を転じて福と為す、という言葉を体現した、処方薬流通のイノベーションとも呼べる当該事象は、将来に向け、徐々に浸透していくと思われます。少しでも医療に携わる従事者としては、その動向を常に把握し、取り残されないよう、情報収集を心がけておいた方がよさそうですね。