対談インタビュー
いつまでも、どこまでも、自分の足で元気に歩けますように。足から美容と健康を支える作業療法士
今回インタビューにお答えいただいたのは、プロテイン会社に勤務している管理栄養士の阿部友美さん。自分の心に問いかけ、行動に移されてきた阿部さんから、企業、フリーランス、広告、マーケティングなど多様なキャリア経験のお話と、それぞれの働き方・職種に必要な素質、お客様との対峙で大切にしていることを伺いました。
編集者
クラミー
阿部さんの現在のお仕事にたどり着くまでの経緯を教えてください。
阿部さん
大学で管理栄養士の資格を取得した後、8年ほどノニジュースなどの健康食品を取り扱う企業の研究員をしていました。その後、個人事業主として、約3年半『薬機法※1』に関するコピーライティングなどの監修をしていましたが、「マーケティングや広報のお仕事に携わりたい」という想いから、プロテインを開発している企業の商品開発部で、薬機法の広報法務※2を行っています。
編集者
りょうちゃん
色々な環境でキャリアを積まれてきたのですね。“管理栄養士”というお仕事を目指すきっかけは何だったのでしょうか?
阿部さん
実は、管理栄養士の資格を取る前に工学建築学科で2年間勉強していたんです(笑)。「インテリアが好き」という理由で選択したのですが、いざ通いはじめてみたら自分の興味とかけ離れているカリキュラムだったことに気がついて。将来のキャリアを考えて中退を決断し、同時に「資格を活かした仕事がしたい」という思いから管理栄養士を目指すようになりました。
編集者
クラミー
管理栄養士の資格だけでなく、なぜ薬機法を勉強されたのでしょうか?
阿部さん
食品メーカーの研究員をしていたとき、会社の意向で大学に出向することになりました。そこで、ポスドク※3のような位置づけで、食品の裏付けや効果のデータを出す業務を任されたんです。関わっていくなかで、どんなに良いデータを得ても薬機法という法律上、正しくても表現できないことに勿体なさを感じていて。“どうしたら成果をうまく伝えられるのか”を勉強するために薬機法を究めることにしました。
編集者
りょうちゃん
やってきたことが強みに繋がっていったんですね。「強みが活かされた」と感じた瞬間はありましたか?
阿部さん
個人のとき、管理栄養士としてだけでなく、薬機法に関する依頼にも対応できるという点が、同業者との差別化になったことですかね。薬機法はとてもニッチな分野なので、お客様に覚えてもらえやすくなりました。
編集者
クラミー
今、企業に勤められてフリーランスになろうとしている方にアドバイスするなら何を伝えたいですか?
阿部さん
強みを1本に絞ることですかね。よく「手広くできるほうが上手くいく」という考えの人がいますが、例えば水道が壊れた時になんでも屋さんよりも「水のトラブル●●」のような一つに特化した業者に助けを求める方が多いと思うんですよね。それは、個人でお仕事をする場合でも通じる点があります。まずは1本で勝負して、お客様を確実に獲得していく。それから他の強みを出して横に広げていくほうが効率的だと思います。
編集者
りょうちゃん
なるほど。軸を作って枝分かれに強みは広げていく、という感じですかね。フリーランスになって良かったことはありましたか?
阿部さん
良くも悪くも「自由がきく」ということですね。自分がしたい方向に舵を切れますから。ただ、“したいこと”と“できること”が違うので、そこのバランスを取る難しさは、すごく勉強になりました。何が大切で、何が必要ないのかを見極める力が養われましたし、会社員の仕事をしていても活きていると実感しています。
編集者
クラミー
企業と個人のどちらもの働き方を経験したからこそ見えてきたんですね。
阿部さん
そうですね。どちらかではなく、どちらもの特徴を理解して働くことが一番効率的だと思います。
編集者
りょうちゃん
フリーランスや企業、マーケティングや広告など様々な働き方・職種を渡り歩かれて分かってきた、それぞれに向いている素質を教えてください。
阿部さん
フリーランスは自分でやりたいことがはっきりしている人がいいんじゃないでしょうか。他にも、複数の「覚えていかないといけないこと」に対して何かしらの策を取ろうとするメンタルが必要ですかね。なので、“自由さ”のみを求めている場合は、独立は考え直すべきだと思います。
編集者
クラミー
確かに。よくSNSの広告に自由な働き方を魅力的に謳ったコピーを見かけますよね。
阿部さん
そうですね。確かに自由に休みはとれますが、お仕事に関する連絡は休みとは関係なしに来ます。信用の問題もありますから、随時対応していかないといけないので全てが自由だと思えるには頑張った先の話ですね。
編集者
りょうちゃん
次に、企業で働く人が向いている素質について伺ってもいいですか?
阿部さん
ひとりですることに不安を抱いている方は、企業で上を目指す努力をしていくほうが合っていると思います。
編集者
クラミー
今は、一度も企業に就職せず、フリーランスという働き方を選ぶ人が増えているように感じますね。
阿部さん
そうですね。でも最初から自己流でやって上手くいく人はほんの一握りなんですよ。時間をかけて失敗を重ねて掴んでいかなければならないので。もし早く正解を見つけたいと思っている方は企業に勤めるのもひとつの選択肢だと思います。企業でノウハウを取り入れたうえで、自分のしたいことが見つかった先でフリーランスの道を選ぶのもアリだと思いますし。
編集者
りょうちゃん
企業での経験を活かし、個人に切り替えてやりたいことに焦点を当てていくというキャリアステップですね。では最後に、マーケティングに向いていると思う方の素質もお聞きしていいですか?
阿部さん
2つあるんですけど、1つは〈探究心〉を持っている方ですね。時代が変われば、それに伴ってマーケティングも変わっていくので、最先端を追い続ける必要があります。2つ目は〈根気強さ〉です。正解がたくさんありますしトライとエラーを繰り返すので重要な要素だと思います。この点はフリーランスと似ているかもしれませんね。
編集者
クラミー
専門職ではないクライアントさんと対峙する機会が多いと思うのですが、専門知識を伝えるときに意識していることはありますか?
阿部さん
元々、研究畑にいたので専門知識をやさしい表現にする習慣がなかったので、最初は分かりやすく伝えることに苦労しました(笑)。以前働いていた会社の上司に「難しいことを難しく話すよね」と言われたこともありましたし。その上司はとても賢い方だったのですが、話しているとそれを感じさせないくらい説明が上手だったんですよね。当時は皮肉に感じていたんですけれど、今思えば優しさだったのかなと。その方の教えのおかげで、お客様に対して“知っている前提”で話さないよう、補足しながら伝えることを意識するようになりました。
編集者
りょうちゃん
確かに。専門知識がある職種だとクライアントさんとの対応は一筋縄ではいかないですよね。
阿部さん
そうですね。薬機法なんて、それ自体を知らない人も多いので。どんなにかみ砕いて説明しても、うまく伝えられないことがありますね。
編集者
クラミー
忍耐力が必要ですね。
編集者
りょうちゃん
それぞれに事情を抱え、変化を求めて独立や転職、副業などに踏み込みたいけれど、なかなか行動に移せないという方に向けて、何かアドバイスをいただけますか?
阿部さん
何もやらず変わることは絶対にありえないので、一旦何かを信じたならやり続けて、無理だったら次、というふうにトライし続けるしかないですね。もちろん失敗も出てきますし、失敗したときに言い訳をしたくなることもあると思います。言い訳を絶対してはいけないとは思わないですが、“自分の決めたモノをどこまで貫くか”は、定めておくべきだと思います。
編集者
クラミー
能動的な働き方をしている人ほど責任感の強い方が多いように感じます。
阿部さん
「何かのせいにしてしまうかも…」と思う間は、独立はしない方がいいと思います。時間や環境のせいにしたい時期だと良い結果は出ない気がしますからね。もちろん、弱音や不満を口にすることはあると思いますが、自分でどうにかして道を開いていくか、上手くいかなかったとき用のプランを予め考えてから行動に移すべきですね。
編集者
りょうちゃん
行動に移すかどうかの線引きは決めていますか?
阿部さん
ここで逃したら自分が後悔するかどうか、という直感ですかね。私の場合、もし決断を迫られていないなら、下準備をしてから動くというタイプです。
編集者
クラミー
タイミングまでに準備をするんですね。
阿部さん
そうですね。準備にも期間は決めていますね。いつまでにここまで達成したらする、していなかったらやめるか違う方向に行く、という感じです。
【インタビューに答えてくれたのは…】
阿部友美様
管理栄養士として企業に勤務。
管理栄養士専攻の大学を卒業後、同大学で1年間、研究助手として従事。
その後、食品メーカー研究員として、共同研究先の大学に出向、素材の効能効果に関する研究に従事。研究結果は、学会発表、論文や雑誌に掲載し、セミナー講師としても研究内容について発信。化粧品開発にも携わり、美容や健康に関するエビデンスある情報配信、コラム記事の作成も担当した。
2018年に独立、管理栄養士でありながら、研究経験のある薬機法攻略アドバイザーとして、フェアに法律対応しながらも製品の良さを最大限に引き出して、お客様の心に響かせるコンテンツ提供を行うサービスも開始した。
現在は、個人事業を続けながら、プロテインメーカーに勤務。
【注釈】
※1:薬機法
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
※2:広報法務
広告に関するさまざまな法令を遵守し、抵触する可能性がある広告を行わないように指導・サポートする業務
※3:ポスドク(Postdoctoral Researcher、Postdoctoral Fellow、Postdoc)
大学院博士後期課程(ドクターコース)の修了後に就く、任期付きの研究職ポジションのことを指す。