大切なひとの言葉で介護の世界へ
「ありがとう」は前進の源

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

まず最初に、現在のお仕事内容について教えてください。

赤星さん

赤星さん

今は、訪問介護のヘルパーステーション(※1)の運営や障がい者さんの相談支援を行っています。他にも、弊社では障がいを抱える方へ向けたグループホーム(※2)と西成区での福祉マンションを設立しており、これら全ての責任者として携わっています。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

介護の業界にたどり着いたきっかけは何だったのでしょうか?

赤星さん

赤星さん

父の言葉ですね。今から約20年前の話なのですが、介護に全く興味が無く、たこ焼き屋さんで働いていました。当時、父が入退院を繰り返していて、ふとしたときに「今後はヘルパーの時代や」って言ったんですよ。「へルパーの免許取ったほうがええんちゃうか?」って。翌年、父が亡くなったときにその言葉を思い出して、資格を取ろうという気持ちになりました。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

勉強されていたときと現場とで、ギャップはありましたか?

赤星さん

赤星さん

ありました。一番は同居されているのに、利用者さんに対して家族が無関心なことが多かったことですね。今思えばそれぞれに事情があったと思うのですが、そのときは少し衝撃で。同時に「自分たちを望んでいる人ってたくさんいるんだ」と思いました。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

実際に現場で働いていくなかで、様々な実態が見えてきたんですね。そういった現場に立ち合い、芽生えた思いがあれば教えていただきたいです。

赤星さん

赤星さん

目の前にいる人に「今より少しでも元気になって、笑ってもらいたい」という想いですかね。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

素敵です。とはいえ、大変なこともとても多いと思います。そんな中で印象に残っている嬉しかった瞬間はありましたか?

赤星さん

赤星さん

すごく頑固な人が、「ありがとう」と言ってくれた瞬間ですね。言葉として返ってくると、胸が熱くなって、「この仕事を選んでよかった」と感じます。その繰り返しですね。

“対人間”であることを念頭に
地道な向き合いこそが信頼を寄せる

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

個人差はあると思いますが、介護の仕事に就くにあたって向いている素質があれば教えてください。

赤星さん

赤星さん

“やる気”と“人に興味を持つこと"ですね。よく新人さんなどに、「お金で人の心は買えないから、人としてきちんと向き合うことが大事だ」ということを言っています。あとは、まず自分に置き換えてみたらやって欲しいことと嫌なことがわかってくる、とも。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

人として生活していくうえでも大事なことですよね。

赤星さん

赤星さん

はい。訪問介護だと、利用者さんのお家に入りますよね。例えば、信頼関係ができていないときに勝手にその辺のものを触られたら、自分たちでも嫌じゃないですか。でも、信頼している友達だったら、なにも思わないのと一緒で、勝手に触れたりしたら、利用者さんも不快になるんですよね。なので、リスペクトを持ってコミュニケーションをきちんと取ることが大切です。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

親しき中にも礼儀ありですね。今後、介護を目指す方へ伝えたいことはありますか?

赤星さん

赤星さん

介護の世界には「しんどい」というイメージがすごくあると思うんですけど、とにかく訪問介護は奥が深い仕事。終わりが無いからこそ、すごくやり甲斐があると思います。それに、介護の知識が自分の成長につながりますし、家族の力にもなるんですよ。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

自分たちの家族にもいつかは必要になる知識ですもんね。

赤星さん

赤星さん

そうですね。例えば、親が何か困ったときに、介護の仕事に就いていたら自分のつながりでケアマネージャーさんに相談ができたり、手続きのサポートができたりと、介護サービスに至るまで迷わないということが一番大きいと思います。

責任者としての職場づくり
一人ひとりの〈ものさし〉を伸ばす導き方

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

責任者として、マネジメントという立場で大切にされていることはありますか?

赤星さん

赤星さん

働きやすい環境を作ること、です。「仕事は楽しいけれど、人間関係の悩みで仕事に行くことが辛い」という話があるじゃないですか。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

仕事の悩みのほとんどが、意外と人間関係が原因だったりだったりしますよね。

赤星さん

赤星さん

人間関係が原因で退職することが無いように、「どんな悩みでも1人で悩まんといて」、「私にできることは何でも力になりたい」という想いを伝えています。これは私だけに限らず、仲間や社長も同じ考えなので、会社全体として悩みを打ち明けやすい環境を常に維持していて。そのおかげか、10年、20年と長い付き合いのヘルパーさんがたくさんいるんです。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

心強い社風ですね。きっとそこにプラスされて、赤星さんの人望もあると思います。そんな赤星さんのモットーは何ですか?

赤星さん

赤星さん

「なるようになる」という考え方と〈適当〉ですね。私自身、型にハマることがすごく苦手で、型をつくると「これをしたら怒られるのではないか」と身動きがとりづらくなってしまうタイプなんです。不思議なもので、何かを聞かれたときに、確定的な答えは出さずに「適当に」と言えば、みんな自分なりに考えて「やってはいけないこと」と「良いこと」の判断をつけるんですよ。そうすることで、みんなのびのびと成長していきますし、自分から率先して、行動に移してくれるようになるんです。

〈本音〉と〈出来事〉を明らかにすることで
感情の原因に気づかせることができる

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

:型にハマってしまっていることに気づかず、仕事を辞めたくても、目の前の生活のために、自分の思いと向き合えない人がいます。そういう方たちに赤星さんなりのアドバイスをするとしたら、なんと声をかけますか?

赤星さん

赤星さん

例えば、介護の仕事なら、「その思いに至った出来事」と、「本気でやめたいと思っているのか」という本音の部分を聞きたいですね。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

「もう嫌だ」と固まってしまった思考を整理するために、1個1個、理由から探していく感じですかね。

赤星さん

赤星さん

そうですね。だって「嫌だ」だけでは漠然としているし、それだけで仲間が離れてしまったら、寂しいじゃないですか。大抵そういう人は「嫌だ」と思いながらどこかでなにか別のことを望んでるのではないか、と思うんです。実は「どうしたの」って聞いてほしかった、とか。後で「あのとき聞いてあげたらよかった」となるよりも、悩んでいたらその子だけを呼んで、“きっかけ”と“本音”を一つひとつ剥がして、それでも尚「辞めたい」という意思があるのであれば、納得をします。でも、意思に揺らぎがあって望みがあると思ったら、諦めずに相談に乗りますね。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

赤星さんのような存在がいれば、思いとどまることもできる気がします。

“訪問介護の良さ”は
利用者に合わせた取り組みと変化にいち早く気づけること

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

赤星さんにも心が折れてしまった瞬間はありましたか?

赤星さん

赤星さん

利用者さんと本気で泣きあって喧嘩をしたことがあります。ヘルパーになって2年ぐらいの頃、すごくきついことを言われて、悲しさと怒りで帰ってしまったんです。それを同僚に相談したら、その人が代わりに利用者さんのところへ行ってくれて。でも、利用者さんは私を怒らせた自覚がなく、私が来ないことに腹を立てていたんだそうで。利用者さんが電話やメールをくれたのですが、そのときは全部を拒否したんですよ。で、その数日後に利用者さんのもとへ行ったら、利用者さんがボロボロと泣き出して。「なんで来なかったんだ」と言うので、「私も心が傷ついた」と気持ちを伝えて、お互いに話し合ったら、そこからすごく心が通じ合うようになったんです。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

ヘルパーという仕事があったとしても、ひとりの人間。そばにいてくれる仲間が必要ですよね。対、利用者さんとはいえ、自分の気持ちをきちんと言葉にすることも大事なのだと思いました。

赤星さん

赤星さん

本当に大事だと思います。「利用者さんだから」と、遠慮する必要はないんです。度がすぎるのはいけないけれど、対人間なので、お互いに意見を言い合ってこそいいものができるんじゃないかな、と感じています。そこが訪問介護の良さの一つかもしれないですね。自由に生きている利用者さんの生活スタイルを変えずに、その方が地域で長く暮らすお手伝いをするためにも大切なことです。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

関係性がとても大切ですね。

赤星さん

赤星さん

利用者さんと毎日接しているので、利用者さんの情報を一番知っているのはヘルパーだと思うんですよ。例えば薬に関しても、新しく薬が変わったときの、今まではなかった症状にいち早く気づくことができるだとか。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

そういった“日々の変化”ってすごく大事だけれど、医療の方だと毎日会うことは難しいので、すべてを把握するのは難しいですよね。

赤星さん

赤星さん

そうなんですよね。しかも利用者さんって、先生の前だと「大丈夫です」と強がってしまいがちなんです。だから、ささいな変化に気づくことができるところが訪問介護の強みだと思います。

最後まで自宅で
赤星さんが目指す介護のかたち

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

赤星さんが今、目指していることは何ですか?

赤星さん

赤星さん

出来るだけ「自宅で看取りたい」ということですね。お家の大きさに限らず、その人にとっては、我が家が一番落ち着く場所だと思うんです。現在は、在宅医療が進歩しているので、様々な医療機関の力を借りて、「最後まで自宅で」という目標を掲げて動いています。そのため『看取り介護のアドバイザー』という資格を取りました。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

『看取り介護アドバイザー』!初めて存じました!

赤星さん

赤星さん

西成区には独居で、家族と離れて暮らしている方や疎遠になってしまっている方がたくさんいらっしゃるんです。そういった方々を、最期の瞬間まで見届けることが私達の役目だと思うんですよね。

編集者<br>りょうちゃん

編集者
りょうちゃん

「最期を看取りたい」という気持ちに至ったキッカケは何だったんでしょうか?

赤星さん

赤星さん

西成区には生活保護で身寄りがいない方が多いので、どこの病院でどのように亡くなったかという情報が途絶えてしまうことが多くて。それに対して、「今まで関わっていたのに、寂しい」という思いがずっとあったんです。それで、最後は家に連れて帰りたいっていう思いに変わっていったのがキッカケです。

編集者<br>クラミー

編集者
クラミー

看取り介護となると、医療連携や地域の方との連携が必要になってきますよね。そこでもコミュニケーション能力を問われる気がします。

赤星さん

赤星さん

そうですね。今は和気あいあいと、連携させてもらっているところがあるので、仲間がいて、協力してもらえて、とてもありがたいです。

【インタビューに答えてくれたのは…】
株式会社関西建設 福祉事業部 エリアマネージャー
赤星博美さん

17歳頃から某有名 たこ焼き屋就職
20歳頃迄飲食関係の仕事を経験
その後 東京で暮らし 
平成15年にヘルパー資格取得
平成18年から訪問介護事業所に就職
平成26年どん介護開設当時から関わらせて頂き現在に至る。


【注釈】
※1:ヘルパーステーション・・・在宅で生活している要支援、要介護認定を受けた高齢者に、ホームヘルパーを派遣して必要なサービスを提供する訪問介護事業所のサービス拠点。
※:グループホーム・・・社会的弱者が少人数で支援を受けながら一般住宅で生活する施設。