対談インタビュー
人をつなぐ〈縁〉と〈愛〉を大切に。未来への布石を打ち続ける薬局薬剤師
今回インタビューにお答えいただいたのは、応援ナースや派遣ナースといった働き方のSNS発信活動のほか、動画制作やキャリアアドバイザーなどの仕事をされている福島さん。ひとつの場所に囚われない仕事を選んだ理由や、ストレスに苛まれすぎない働き方の心構え、新しいことに挑戦するうえでのアドバイスなどをたっぷり伺ってまいりました。
編集者
クラミー
まず始めに、現在の仕事内容について教えてください。
福島さん
これまで培ってきた応援ナースや派遣ナースの経験をシェアするためのSNS活動や、応援ナースや派遣ナースになりたいと思っている方のキャリア相談に乗ったり、企業様から請け負った動画の作成などをしたりしています。
編集者
りょうちゃん
福島さんのYouTubeを拝見させていただいたのですが、世界1周に行かれた経験があるなど、かなり活動がアクティブですよね!元々は一般的な病院で看護師として勤務されていたという福島さんが、どのようにして現在のお仕事にたどり着いたのかとても気になります。
福島さん
正直に言うと、看護師という職業に対する熱量が最初はそこまで高くなかったんです。「お金に困りたくなかったから」「安定した職業が良かったから」という理由だけで何となく看護学校に入って、そのまま看護師になって。業務自体は苦ではなかったですし人間関係にも恵まれてはいたのですが、「このままで本当にいいんだろうか」という気持ちがずっと燻っていました。
編集者
クラミー
どこかモヤモヤされていたんですね。
福島さん
はい。そんなとき、たまたま本屋さんで世界1周に関する本がふと目に留まりました。言葉の響きからするとスケールが大きく感じますが、やろうと思えば意外と誰でもチャレンジできそうな内容が書かれていて、「私にもできるかも」という気持ちが膨らんでいって。そこから約5年かけてお金を貯めて、ある程度貯まったところで病院を辞め、世界1周の旅をスタートさせました。そのなかで、各地で旅をしながら仕事もするという働き方をされている方とちらほら出会ったんです。
編集者
りょうちゃん
いわゆるノマドワーカーですね。
福島さん
「こんな風に仕事をすることもできるんだ!」と、当時の私にとっては新しい発見でした。パソコン1台で自由に動けるようになったら確かに良いなと思い、派遣看護師として働きながらさまざまな場所に住みつつ、パソコン1台でできる仕事でも稼げるようになるために、まずはブログを始めました。ただ最初はなかなか収益が発生せず、プログラミングを勉強してみたり、また違うブログを立ち上げてみたりと試行錯誤が続きました。YouTubeを始めてから少しずつ観てくださる方が増えてきて、収入も安定し、いまはYouTubeでの発信や企業様とのお仕事だけで、どこでも好きな場所で生活できるようになりました。
編集者
クラミー
応援ナースとして各地に行かれた際は、病院勤務時代には感じなかった新たな気づきも?
福島さん
ありましたね。応援ナースとしてまず最初に行ったのは沖縄の石垣島だったのですが、職場は病院ではなくデイサービスの施設だったんです。それまでは病院の中の世界しか見てこなかったので、患者さんがご自宅でどんな生活を送っているのかまったく知りませんでした。老年期の場合、どんどん弱っていって最期の時を迎えるという物哀しい印象を抱いていたのですが、石垣島で出会ったデイサービスの利用者さんたちは、弱っていくどころかとっても楽しそうだったんです。きっと、病院ではなく自分の家で生活ができているからこそなんだろうな、と、在宅医療の良さをひしひしと感じました。
編集者
りょうちゃん
きっと利用者さん同士の絆もあるでしょうし、コミュニティ色もより強いですよね。これから先、福島さんが経験されたような働き方が増えてくるのが想像できることに加え、状況的に応援ナースを呼ばないと仕事が回らない現場もまた増えてくると思います。同じ看護師ではあるものの、応援ナース・派遣ナースと病院看護師とでは違う部分も多いと思うのですが、どんな方なら応援ナースや派遣ナースに向いているでしょうか?
福島さん
仕事以外のことでも構わないですが、何かしら目標や目的を持っている人は、つまずかずに応援ナースや派遣ナースの仕事を続けられるんじゃないかなと思います。何か辛く苦しいことがあって、そこから逃れたいからやめるという選択は悪くはないですが、逃げるように選ぶのではなく、「私はこれがやりたいから」と確かな目的を持って主体的に行動できる人が向いているのではないか、と。
編集者
クラミー
ひとつの場所に囚われないからこそ、より主体性が求められるんですね。
福島さん
そうですね。それから、専門分野を極めたい方にはあまり向いていないかもしれません。さまざまな場所を飛び回る応援ナースや派遣ナースの仕事柄、ひとつのことに没頭そして専門的知識を深めていくのはなかなか難しいですね。
編集者
りょうちゃん
少し踏み込んだことをお聞きしますが、応援ナースや派遣ナースの給料面についてもお伺いしたいです。
福島さん
正直に言えば、かなり安かったです。当初は夜勤がない場所を希望していたのですが、いざ働いてみると、やっぱり夜勤をしないと生活はかなり苦しくて。手取り20万を切ることもありましたね。
編集者
クラミー
それでも応援ナースや派遣ナースを辞めなかった、そのモチベーションや活力はどこから来ていたのでしょうか?
福島さん
ストレスがまったくなかったからです。以前はよく、「明日仕事行きたくないな…」と思いながら日々働いていたのですが、応援ナースや派遣ナースの仕事においてはそういった感情に全然襲われなくて。
編集者
りょうちゃん
病院という狭い世界のなかにいると、何となく疲れてしまって、新しい世界を知りに行く元気もないような方が多くいらっしゃると思うんです。抱えているストレスを軽減させる方法について、何かアドバイスできることはありますか?
福島さん
病院以外のコミュニティを持つことはやっぱり大事だと思います。それから、身体のメンテナンスも大切です。
編集者
クラミー
なるほど。たとえば休みの日でも、ずっと寝て過ごすのではなく…?
福島さん
そうですね。しんどいからとにかくずっと寝るというのも悪くはないですが、自分の身体が何を訴えかけているのか、しっかり耳を傾けるのが大事です。どこか痛い場所があるのなら放置せずにちゃんとケアしてあげたり、身体を温めて血流を良くしてあげたり。思っている以上に心と身体は繋がっているので、メンタルを守るためにも身体のメンテナンスはぜひ意識してほしいですね。
編集者
りょうちゃん
デイサービスでお仕事をされた経験もあるということでしたが、利用者さんから投げかけられる言葉で傷つき、ストレスを感じてしまうスタッフさんも少なくないという話を聞いたことがあります。
福島さん
私の場合はあまり傷つきはしなかったですね。利用者さんが発する言葉は、基本的にその方が歩んできた人生において形作られた価値観に基づいているものだと思うんです。そういう考え方を持っている方だと思って接すれば、どんな態度を取られても、必要以上に自分を卑下したりショックを受けたりはしませんでした。
編集者
クラミー
いまの福島さんの言葉は、人間関係において悩んでいる方にとても響きそうな気がします…!
編集者
りょうちゃん
何か新しいことを始めたくなった場合、そのときにいる環境から離れたり辞めたりすることも必要だと思います。福島さんもまさに、病院看護師を辞めて世界1周という大きなチャレンジに踏み切りましたが、どのような状態まで達したら新しいことへ一歩踏み出すのか、その見極め方のポイントは何かありますか?
福島さん
私の場合は、正直に言うと何も考えてなかったんです。考えたら逆に行動できなくなると思ったので、「いいな」「やりたいな」と思ったらもう身体を動かすようにしていました。30歳を越えてからは「すごく無謀なことをしていたな」とも思いましたが、考えすぎなかったからこそ思い切った行動ができたんだろうな、といまは感じています。
編集者
クラミー
なるほど。でも、若いときの無謀なチャレンジは意外と後から取り返しが効くとも思うので、決して悪いものではないですよね。
福島さん
そうなんです。まずは動いてみることが大事だと思います。
編集者
りょうちゃん
福島さんは専門学校を卒業後、病院でしばらくの間看護師のキャリアを積まれたということでしたが、「看護師なら最初はこんな場所で働いたほうがいい」「こんな経験をしたほうがいい」といったようなファーストキャリアに関するアドバイスをぜひ伺いたいです。
福島さん
私は周囲から「最初はハードな所で働いたほうがいい」とよく言われていました。具体的に言うと、急性期や循環器などです。なので私も学校卒業後は循環器を選びました。周囲から勧められていた通り、最初に大変な病院で働いておいてよかったと確かに思いましたね。
編集者
クラミー
それはどういった所で実感されたのでしょうか?
福島さん
応援ナースとして働き始めると、「これくらいの仕事量なら病院にいた頃よりも全然さばける」と思うことが多かったんです。また、循環器は比較的どこの病棟にもあるものなので、応用が効きやすいのも良い所でした。
編集者
りょうちゃん
たとえ最初に大変な思いをしたとしても、後々にそれが培った確かな経験として活きてくるんですね。
福島さん
特に応援ナースは即戦力が求められる仕事なので、行った先の病院で技術的なことを教えてもらう機会はないんです。その病院のシステムに関する指導は受けますが、看護技術に関する研修はまったくありません。そのため、ある程度臨床経験を積んでいるほうがやりやすいです。そのうえ忙しい環境にも早いうちに慣れておくと、どこに行っても仕事に順応できると思います。
編集者
クラミー
先々の働き方の選択肢を増やすためにも、ファーストキャリアを積むフェーズは言わば我慢の時期でもあるんですね。
福島さん
もちろん、明確に最初からやりたいことがあるのであればそちらに進むべきだとは思いますが、もしないのなら、あえてハードな所を選んでおくといいと思います。
編集者
りょうちゃん
最後に、今後の展望について教えてください。
福島さん
つい最近、医療系の人材紹介会社さんと提携させてもらい、新たにキャリアアドバイザーの仕事を行うことになりました。応援ナースや派遣ナースに興味がある看護師さんのカウンセリングを担当し、アドバイスをする仕事です。いまはまだ始めたばかりで実績がないので、今後力を入れていきたいな、と。
編集者
クラミー
福島さんのご経験が、多くの人のキャリアを動かすことにつながっていくんですね!
福島さん
そうですね。キャリアアドバイザーとして、目の前にある選択肢の優先順位を決めるお手伝いをしていけたらいいな、と。仕事だけではなく、人生という大きな枠で見ながら、自分が人生においてどうなっていきたいのかヒアリングを重ね、1人ひとりにとってベストな働き方を探っていきたいです。
編集者
りょうちゃん
応援ナースや派遣ナースといった働き方が、さらに広がっていきそうですね。
福島さん
はい。またさらに、相談者とまた別の相談者がつながれるような仕組みも作っていきたいなと考えています。応援ナースは知らない場所に1人で赴くので、なかなか友達ができにくいんです。「この場所ならこういう人がいますよ」と紹介してあげられるようなネットワークを作って、仕事面のみならずプライベート面のサポートもできたらな、と。
【インタビューに答えてくれたのは…】
福島(ふくしま)さん
派遣ナースや応援ナースなどの正社員ではない看護師の働き方をyoutube等のSNSで発信しています。今年度からナラティブガイドという人材紹介会社で派遣看護師や応援ナースに興味がある看護師さんのキャリアアドバイザーとして活動させていただくことになりました。他には業務委託を受けて、新しい看護記録システムの説明動画を作成しています。
【現在の仕事に就こうと思ったキッカケ】
バックパッカーで世界一周をして、好きなときに好きな場所で暮らしたくなったからです。場所を選ばずどこでも働ける方法を模索していたら、今の働き方ができるようになりました。
2010年 急性期病院へ就職
2015年 退職 / 世界一周
2016年 応援ナースを始める(ノマドナースのサイトを作り始める)
2019年 派遣看護師をしながらYouTubeを始める
2020年 フリーランスとして独立、五島列島へ移住
2024年 キャリアアドバイザーとして活動を始める
Instagram:https://www.instagram.com/nomadnurse.f/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCPHzIex78fw1XUUWR0X-o5Q
HP:https://nomadonurse.com/