対談インタビュー
患者1人ひとりに寄り添い、負担を軽減。再生医療の力を信じ続ける整形外科医
今回インタビューにお答えいただいたのは、関節の再生医療に特化したシンセルクリニックの院長・武内晋司郎さん。整形外科医としてキャリアを積まれてきた武内さんが独立開業し、再生医療を専門にしようと思った理由や、再生医療の未来に対するまっすぐな想いなどについてたっぷり伺ってまいりました。
編集者
クラミー
まず始めに、現在の仕事内容について教えてください。
武内さん
大阪・心斎橋にあるシンセルクリニックの院長として、整形外科医の仕事をしています。
編集者
りょうちゃん
整形外科医を志したキッカケは何だったんですか?
武内さん
昔ラグビーをやっていたのですが、競技の性質上よくケガをしていて。その時に整形外科の先生にお世話になったので、「自分も先生のような整形外科医になりたい」と思ったのがキッカケでした。
編集者
クラミー
大学をご卒業された後から、ずっと整形外科医としてお仕事を?
武内さん
そうですね。元々は病院で整形外科医として働いていたのですが、2023年の10月に独立開業しました。
編集者
りょうちゃん
シンセルクリニックは関節の再生医療に特化した医院と伺いました。なぜ再生医療を専門にしようと思われたんですか?
武内さん
以前は病院で手術を主に担当していたのですが、手術に躊躇する患者さんがかなり多くいらっしゃって。そういった方々を、手術をしない別のアプローチで治すことができたらいいな、とずっと考えていました。そんなときに出会ったのが、再生医療です。
編集者
クラミー
再生医療であれば、大がかりな手術は必要ないのでしょうか?
武内さん
そうですね。身体への負担が格段に少なく済みます。手術の場合、手術時間は1時間半〜2時間ほどかかりますし、入院期間も1ヶ月〜1ヶ月半ほどにわたるのが一般的です。さらにはリハビリにもそれ相応の時間を要します。その点、再生医療ならまず入院する必要がありません。再生医療なら処置レベルのものですし、日帰りで行えます。
編集者
りょうちゃん
高齢者など、手術をすること自体が難しい方にとってはとても親和性のある医療ですね!
武内さん
はい。他にも、スポーツをやられている方で、この先スポーツを続けていくうえで手術はリスクがあるからできるだけ避けたいという理由で再生医療を選ばれるケースもあります。
編集者
クラミー
武内さん自身にスポーツをされていたご経験があるからこそ、大いに気持ちに寄り添えますよね。
武内さん
そうですね。もしスポーツをやっていた頃の自分が再生医療と出会えていたら、また別の新しい道が開けていたのかな、と考えることもあります。
編集者
りょうちゃん
再生医療は新しい医療であるがゆえに、まだそこまで社会において浸透していない印象があります。再生医療に特化したクリニック、というのも珍しく感じました。
武内さん
そうですね。開業時は一般的な整形外科も一緒にやろうかと思ったこともあったのですが、保険診療の場合、たくさんの患者さんが来院するためどんどん回転させていく必要があります。そうなってくると、診察時間がどうしても短時間になってしまうんです。ただ、再生医療は保険診療ではなく自費診療です。
編集者
クラミー
自費診療の場合、保険診療とはどう違いが出てくるのでしょうか?
武内さん
治療が高額になってくる分、当院では患者さんとの密なコミュニケーションを大事にしています。1時間〜1時間半ほどの時間を使ってじっくりカウンセリングを行い、MRIでの撮影もして、ご自身の身体の状態を理解してもらったうえで治療に進むようにしています。
編集者
りょうちゃん
一般的な整形外科よりも、患者さん1人ひとりとより深く関わることができるんですね。患者さんとの関わりの中で、印象的だった出来事などはありますか?
武内さん
再生医療によって手術をせずに元の生活に戻れたことに加えて、プラスアルファで「気持ちが前向きになった」「心が明るくなってより生き生きとした生活が送れるようになった」とったお声をいただいたときは、やっぱり嬉しかったですね。
編集者
クラミー
再生医療の力が感じられるお言葉ですね!
編集者
りょうちゃん
そもそも、なぜ武内さんは自らの手で開業しようと思われたんですか?
武内さん
先ほどおっしゃっていただいた通り、再生医療はまだまだ認知が広がっていない分野です。もっと多くの人にこの素晴らしい医療を届けたいという想いを実現するためには、より主体的に動いたほうが良いのではないかと思い、開業に至りました。
編集者
クラミー
開業するにあたり、苦労したことや大変だったことなどはありますか?
武内さん
ノウハウをしっかり身につけていたわけではなかったので、1から自分で情報を集めて、クリニックの間取りや内装を1つひとつ決めていく作業はかなり大変ではありましたね。
編集者
りょうちゃん
開業となると相応の資金も必要となってくるので、お金の不安を抱いている方が少なくないと思います。そういった開業準備の段階にいる方々にアドバイスをするとしたら、どんな言葉をかけますか?
武内さん
基本的には何とかなると思いますが、あまり大きい買い物はしすぎないほうがいいかもしれません。色々揃えようとすると、つい「あれも欲しい」「これも欲しい」と欲が出てきてしまいますが、最初はなるべく小さいスケールで抑えたほうがいいと思います。
編集者
クラミー
あらゆる状況を想定したリスクヘッジが大事、ということですね。
編集者
りょうちゃん
この媒体の読者には医療の道を目指している学生の方が多くいらっしゃるのですが、「こんな人が整形外科医に向いている」といった素質のようなものを挙げるとしたら何になりますか?
武内さん
誰でも来れるのが整形外科の良いところなんじゃないかな、と思います。
編集者
クラミー
何か秀でたものがなくても、比較的間口が広いようなイメージでしょうか?
武内さん
そうですね。どんな方でも馴染みやすい分野なのではないか、と。1つ挙げるならば、スポーツをやられている方にとってはより興味深い領域になってくるかと思います。
編集者
りょうちゃん
ちなみに、整形外科医を目指そうと思った際、学校ではどの程度再生医療について教わるのでしょうか?
武内さん
いや、学生の段階ではほとんど学ぶ機会はないんじゃないかと思います。
編集者
クラミー
もし再生医療に興味がある場合、どのように知識をつけていくといいのでしょうか?
武内さん
先ほどもお話した通り、再生医療は自由診療ですし、専門性の高い分野になってくるので、整形外科医としてひと通りのことができるようになってから学び始めるのでも全然遅くないと思います。
編集者
りょうちゃん
まずは、一人前の医者としてある程度経験を積んだうえで、そこから知識をつけていくのがいいということですね。
編集者
クラミー
最後に、今後の展望について教えてください。
武内さん
再生医療の力を1人でも多くの人に実感してもらうために、各地にクリニックを展開し、認知拡大に努めていきたいと考えています。
編集者
りょうちゃん
今は1つですが、今後さらに数を増やしていくことを考えているんですね。再生医療そのものについては、この先どんな風に日本に浸透してほしいと思われていますか?
武内さん
世界的に見ると、日本の再生医療はかなり先進的なんです。東南アジア系の方々が再生医療を受けるために日本に来られるケースがすでに増えてきています。ですので、より視野を広くし、ワールドワイドな規模でメイドインジャパンの再生医療が広がっていったら面白いのかな、と思いますね。
【インタビューに答えてくれたのは…】
武内 晋司郎さん
医師
自費診療、再生医療専門のクリニック院長
https://sincellclinic.com
【経歴】
三重大学医学部卒業
済生会中津病院
淀川キリスト教病院 整形外科
和泉市立総合医療センター 整形外科
守口生野記念病院 整形外科
南港病院 整形外科
シンセルクリニック 開設